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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第3章 ♠Round.Ⅰ(喪失)♠
手術の三日後には、点滴も外れ、歩行訓練が始まっている。歩き始めは多少のふらつきはあったものの、手術自体はこれで二度目だから、戸惑うことはなかった。
その日、紗英子は診察を受けるために二階から一階の診察室まで降りた。診察室へと至る待合室にはいかにも座り心地の好さそうなソファが何列にも並び、お腹の大きな妊婦が何人も腰掛けている。
紗英子は努めてそちらを見ないようにしながら、何の気なしに一番前に置いてある大型液晶テレビを眺めていた。
太ったお笑い芸人が何か芸を披露しているらしく、母親に連れられてきている小さな子どもがしきりに画面を見ては笑っている。
男の子で五歳くらいのその子は、赤ちゃんを抱いた母親の膝に掴まってぴょんぴょんと跳びはねていた。
「ねえ、ママ、だから、何だと思う?」
その日、紗英子は診察を受けるために二階から一階の診察室まで降りた。診察室へと至る待合室にはいかにも座り心地の好さそうなソファが何列にも並び、お腹の大きな妊婦が何人も腰掛けている。
紗英子は努めてそちらを見ないようにしながら、何の気なしに一番前に置いてある大型液晶テレビを眺めていた。
太ったお笑い芸人が何か芸を披露しているらしく、母親に連れられてきている小さな子どもがしきりに画面を見ては笑っている。
男の子で五歳くらいのその子は、赤ちゃんを抱いた母親の膝に掴まってぴょんぴょんと跳びはねていた。
「ねえ、ママ、だから、何だと思う?」