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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅤ(覚醒)
―あの、話。
名乗りもせずにいきなり切り出したのだが、そこは長年の付き合いだから、紗英子もすぐに判ったようだ。
―ええ。
力強い応えが返ってきて、何故か、紗英子が少しも動じていないようなのが、かえって有喜菜の心を奮い立たせた。
私はこんなにも動揺しているのに、難題を突きつけた紗英子の方は平然として、あたかも当然の要求をしたかのように構えている。
そのことにひどく傷つき、向こうがその気なら、自分も受けて立とうと決めた瞬間だった。恐らく、紗英子は有喜菜が断るとは考えてもいないのだろう。だから、こんなにも泰然としていられるのだ。
いっそのこと、この場でその裏をかいて
―やっぱり、あの話はお断りするわ。
と言ってやるのも一興かもしれなかった。しかし、有喜菜は別の道を選んだ。
名乗りもせずにいきなり切り出したのだが、そこは長年の付き合いだから、紗英子もすぐに判ったようだ。
―ええ。
力強い応えが返ってきて、何故か、紗英子が少しも動じていないようなのが、かえって有喜菜の心を奮い立たせた。
私はこんなにも動揺しているのに、難題を突きつけた紗英子の方は平然として、あたかも当然の要求をしたかのように構えている。
そのことにひどく傷つき、向こうがその気なら、自分も受けて立とうと決めた瞬間だった。恐らく、紗英子は有喜菜が断るとは考えてもいないのだろう。だから、こんなにも泰然としていられるのだ。
いっそのこと、この場でその裏をかいて
―やっぱり、あの話はお断りするわ。
と言ってやるのも一興かもしれなかった。しかし、有喜菜は別の道を選んだ。