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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第9章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
国内でも十位以内に入るという大きさの湖は今日もよく澄んでいた。ちょっと見には滋賀県の琵琶湖を連想させるようだ。蒼く澄み渡った空と水平線が混ざり合い、どこからが湖なのか判別がつかない。
カモメが白い翼をひろげて蒼い空を旋回している。真っ白なカモメまでもが空の色に染まりそうなほど鮮やかなブルーだ。
果てのない空を仰ぎながら、自分は多分、この日に見た空を忘れはしないだろうと紗英子は思った。先刻見たばかりのクリニックの庭園には、寒桜が早くも満開になっていた。桃色の愛らしい花をを眺めて通り過ぎ、考えてみれば、今朝、クリニックを訪れたときの自分は寒桜も何もけして眼に入ってはいなかったのだと改めて気づいた。
それほどに今日の診断結果は紗英子の頭を占めていたのだ。当然といえば当然かもしれないけれど、今日まで自分がいかに治療のことしか考えていなかったのかと思い知らされた気分だった。
カモメが白い翼をひろげて蒼い空を旋回している。真っ白なカモメまでもが空の色に染まりそうなほど鮮やかなブルーだ。
果てのない空を仰ぎながら、自分は多分、この日に見た空を忘れはしないだろうと紗英子は思った。先刻見たばかりのクリニックの庭園には、寒桜が早くも満開になっていた。桃色の愛らしい花をを眺めて通り過ぎ、考えてみれば、今朝、クリニックを訪れたときの自分は寒桜も何もけして眼に入ってはいなかったのだと改めて気づいた。
それほどに今日の診断結果は紗英子の頭を占めていたのだ。当然といえば当然かもしれないけれど、今日まで自分がいかに治療のことしか考えていなかったのかと思い知らされた気分だった。