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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
更に、有喜菜は過去に三度も辛い流産・死産を経験しているという。確かに妊娠できる身体なのかもしれないが、そんな哀しい過去を背負った女性に対して、その身体に赤の他人の子を入れて産む代理母出産をせよとは―。
直輝は最早、有喜菜にかけるべき言葉を持たなかった。直輝にとって、代理母というのは、他人の子どもを生むために腹を貸す道具だとしか思えない。つまり、利用されているだけだとしか。
もちろん、有喜菜が紗英子に同情や共感を示して、有喜菜自身の意思で協力しようと申し出たのなら、また話は別だ。だが、話の流れからして、どうもそうではないようだし、第一、紗英子の思い込みの激しい性格からすれば、有喜菜に代理出産を頼むのを躊躇いはしないだろう。
紗英子は、自分がずっと恋人であり妻だと思い続けてきた女は、親友にそこまで非常識なことを頼んだのか。相手の都合や考えをろくに考慮せずに、代理母になれと。紗英子にもし少しでも有喜菜を想う気持ちがあれば、間違っても、そんなことを頼みはしなかったろう。つまるところ、彼の妻は親友である有喜菜を自分の夢を叶えるための道具としか見なさなかったのだ。
直輝は最早、有喜菜にかけるべき言葉を持たなかった。直輝にとって、代理母というのは、他人の子どもを生むために腹を貸す道具だとしか思えない。つまり、利用されているだけだとしか。
もちろん、有喜菜が紗英子に同情や共感を示して、有喜菜自身の意思で協力しようと申し出たのなら、また話は別だ。だが、話の流れからして、どうもそうではないようだし、第一、紗英子の思い込みの激しい性格からすれば、有喜菜に代理出産を頼むのを躊躇いはしないだろう。
紗英子は、自分がずっと恋人であり妻だと思い続けてきた女は、親友にそこまで非常識なことを頼んだのか。相手の都合や考えをろくに考慮せずに、代理母になれと。紗英子にもし少しでも有喜菜を想う気持ちがあれば、間違っても、そんなことを頼みはしなかったろう。つまるところ、彼の妻は親友である有喜菜を自分の夢を叶えるための道具としか見なさなかったのだ。