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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
タクシーに再び乗り込むと、初老の運転手は無言で発車させる。この歳まで、一体いかほどの客を乗せて走ったのだろう。
見知らぬ他人の長い果てのない人生をほんの一瞬だけ、共有するタクシー運転手と乗客。しかし、運転手は何があっても客の人生に立ち入ることはないし、見て見ないふりをする。
直輝はいつしか運転手から意識を逸らし、車窓を流れては消える夜の町を無表情に眺めた。
舗道沿いに植わった桜並木が今、盛りを迎えようとしている。いつしか鈍色の空からは滴が落ち始めていた。
この雨で桜もかなり散るだろう。
雨に濡れ、しっとりと雨露を帯びた薄紅色の花びらは、何故か有喜菜の見たこともない裸身を想像させる。
一糸纏わぬ姿で真っ白なシーツに横たわった有喜菜は、さぞかし美しく、この上なく淫靡に違いない。その白い素肌の上に露を落とすように、熱い口づけを落とせば、白い透き通った肌はほのかな桜色に染まるのだろうか。
見知らぬ他人の長い果てのない人生をほんの一瞬だけ、共有するタクシー運転手と乗客。しかし、運転手は何があっても客の人生に立ち入ることはないし、見て見ないふりをする。
直輝はいつしか運転手から意識を逸らし、車窓を流れては消える夜の町を無表情に眺めた。
舗道沿いに植わった桜並木が今、盛りを迎えようとしている。いつしか鈍色の空からは滴が落ち始めていた。
この雨で桜もかなり散るだろう。
雨に濡れ、しっとりと雨露を帯びた薄紅色の花びらは、何故か有喜菜の見たこともない裸身を想像させる。
一糸纏わぬ姿で真っ白なシーツに横たわった有喜菜は、さぞかし美しく、この上なく淫靡に違いない。その白い素肌の上に露を落とすように、熱い口づけを落とせば、白い透き通った肌はほのかな桜色に染まるのだろうか。