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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
 その様を、この眼で見てみたい。いや、見るだけでは足りない。唇で指先で存分に味わってみたい。
 しっかりしろ、俺。
 彼は自分を叱咤した。たまたま有喜菜が代理母になって俺の子を妊娠しただけの話じゃないか。
 何もだからといって、俺と有喜菜が関係したわけでもないし、俺たちの関係が何か特別なものに変化したわけでもない。
 その辺りをしっかりと認識しておかなければ、後々、取り返しのつかないことになる。
 直輝は自分を必死で自制していたが、既にそのようなことを自分に言い聞かせること自体、自分が普通の精神状態ではないと気づくべきだった。
 何も紗英子だけが無邪気な仮面を被っているわけではないのだと知った方が良かったかもしれない。女はいつの時代でも、どんな女でも魔性をその奥底に秘めている。
 そして、愚かな男はそんな女に騙される。
 いや、騙すというよりも、本当に欲しいものを得ようとする時、女は男よりもはるかに利口にしたたかになるのだと、自分の置かれた境遇をも最大限に活用するのだと。
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