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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第11章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
 なのに、今、こうして直輝に初めて抱かれ、有喜菜はもっと欲張りになっている。直輝に、ずっと一緒にいて欲しいと、彼の側にずっといたいと願うようになってしまった。
 だが、有喜菜はそれだけはしたくなかった。たとえ紗英子がもう親友とは呼べなくなってしまっても、有喜菜を子どもを生ませるために都合良く利用したのだとしても、かつての友として、その夫を奪い家庭を壊すなんてできるはずがなかった。
 想いに沈む有喜菜の耳を、直輝の声が打った。
「もう、遅すぎるんだろうか」
 有喜菜は俄に現実に引き戻され、弾かれたように顔を上げる。
 直輝がふいに洩らした呟きには、意外にも懇願するような響きがあった。
「え?」
 意味を図りかねて問うと、いきなり覆い被さってきて、烈しく貪るような口づけをされた。
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