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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第11章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
問題は、有喜菜自身にあったのか? 一度だけ、有喜菜は医師に訊ねたことがある。S市のクリニックで行われる健診には、いつも紗英子が我が者顔でついてくるから、訊くことはできない。だから、安定期の五ヶ月に入るまで注射に通っていた近くの小さな個人病院に行って訊ねたのである。
有喜菜の思いつめたような表情に、初老の医師は細い眼を更に細めて言った。
―それは、あなたの心配のしすぎというものですよ、宮澤さん。あなたの場合はたまたま不幸が重なったというだけの話でしょうな。まあ、以前のご主人とあなたの相性が悪かったという可能性もないわけではないですが、そういう場合は、稀に生まれてくる子どもが順調に育たない場合があるんです。言わば精子と卵子の不適合とでもいうのでしょうか。しかし、もう済んだことですし、今は順調に赤ちゃんも育っているわけですから。
その応えは有喜菜の不安を幾ばくかは和らげてくれた。確かに、死んだ子どもたちは可哀想だけれど、過去の不幸を今更嘆いても意味はない。
有喜菜の思いつめたような表情に、初老の医師は細い眼を更に細めて言った。
―それは、あなたの心配のしすぎというものですよ、宮澤さん。あなたの場合はたまたま不幸が重なったというだけの話でしょうな。まあ、以前のご主人とあなたの相性が悪かったという可能性もないわけではないですが、そういう場合は、稀に生まれてくる子どもが順調に育たない場合があるんです。言わば精子と卵子の不適合とでもいうのでしょうか。しかし、もう済んだことですし、今は順調に赤ちゃんも育っているわけですから。
その応えは有喜菜の不安を幾ばくかは和らげてくれた。確かに、死んだ子どもたちは可哀想だけれど、過去の不幸を今更嘆いても意味はない。