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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第11章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
では、父親である直輝の心情はどうなのかというと、やはり彼も人間―というより、本来、彼は心優しい男なのだ。生まれてこようとしている赤ん坊が可愛くないはずはなかった。
それは今も、愛おしげにお腹に触れている彼の表情を見れば判ることだ。
その日、有喜菜と直輝は、かつて有喜菜が注射に通っていたクリニックを訪れた。S市のクリニックには直輝は行けない。紗英子はまだ有喜菜と直輝のことを知らないからだ。
有喜菜が診察を受ける間中、直輝は始終、緊張した面持ちで付き添っていた。有喜菜の大きなお腹に医師が超音波を当てると、傍らのモニターに胎児の画像が映し出される。
直輝は神妙な顔でその画像を見守り、医師からの説明を逐一聞いていたが、
―元気なお子さんですよ。ほら、これが両脚。
そう言って医師が胎児の脚の部分を指し示した途端、胎児が力強くキックして、現実に有喜菜の大きくせり出した腹部が烈しく動いた。
それは今も、愛おしげにお腹に触れている彼の表情を見れば判ることだ。
その日、有喜菜と直輝は、かつて有喜菜が注射に通っていたクリニックを訪れた。S市のクリニックには直輝は行けない。紗英子はまだ有喜菜と直輝のことを知らないからだ。
有喜菜が診察を受ける間中、直輝は始終、緊張した面持ちで付き添っていた。有喜菜の大きなお腹に医師が超音波を当てると、傍らのモニターに胎児の画像が映し出される。
直輝は神妙な顔でその画像を見守り、医師からの説明を逐一聞いていたが、
―元気なお子さんですよ。ほら、これが両脚。
そう言って医師が胎児の脚の部分を指し示した途端、胎児が力強くキックして、現実に有喜菜の大きくせり出した腹部が烈しく動いた。