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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第3章 ♠Round.Ⅰ(喪失)♠
「気分はどうだ? 傷は痛むか?」
紗英子が意識を取り戻したのがよほど嬉しいのか、直輝は顔を輝かせ、矢継ぎ早に訊いてくる。
普段は感情をあまり露わにしない夫がここまで歓んでいる―、本当なら、そのことにこそ感謝すべきだったのかもしれないけれど、紗英子は不機嫌に顔を背けた。
「良いわけないでしょ」
その科白には、紗英子としてはあらゆる想いを込めたはずだった。
しかし、単純な夫には理解できなかったようだ。直輝は整った顔を瞬時に翳らせ、更に身を乗り出すようにして紗英子の顔を見ようとする。
「やっぱり、傷が痛むのか? もしかして、吐きそうだとか?」
ああ、何てデリカシーの欠片もない男なの! たった今、女として最も大切なものを失った妻にかける言葉は、そんなものしかないの?
紗英子が意識を取り戻したのがよほど嬉しいのか、直輝は顔を輝かせ、矢継ぎ早に訊いてくる。
普段は感情をあまり露わにしない夫がここまで歓んでいる―、本当なら、そのことにこそ感謝すべきだったのかもしれないけれど、紗英子は不機嫌に顔を背けた。
「良いわけないでしょ」
その科白には、紗英子としてはあらゆる想いを込めたはずだった。
しかし、単純な夫には理解できなかったようだ。直輝は整った顔を瞬時に翳らせ、更に身を乗り出すようにして紗英子の顔を見ようとする。
「やっぱり、傷が痛むのか? もしかして、吐きそうだとか?」
ああ、何てデリカシーの欠片もない男なの! たった今、女として最も大切なものを失った妻にかける言葉は、そんなものしかないの?