この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第4章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
その時、気づくべきだったのだと思う。有喜菜の言葉の端々に滲み出る切ない感情の揺れに。
「それでね。相談があるのよ」
紗英子は、どこか浮かぬ表情になってしまった有喜菜には構わずに続けた。
「私たち、十日前が結婚記念日だったんだけど、今年はまだ何のお祝いもできていなくて」
「確か毎年、披露宴をしたホテルでディナーするとか話してなかったっけ?」
「そう。でも、今年は私が入院してたから」
「それは仕方ないよね」
「でも、今年に限って、直輝さんが何も言ってくれなかったの。いつもなら、決まって結婚記念日はどうするって訊ねてくれるんだけどね」
「かえって言わない方が良いと思ったんじゃない? 直輝は見かけによらず、繊細なところがあるから」
「そうよね。私も有喜菜の言うとおりだと思ったの。どうせお祝いできないから、黙っておこうとか気を回したんだと思う。それでね、今年は私の方からクリスマスイブに記念日と兼ねてお祝いしようって彼に提案するつもり。毎年、ずっとプレゼント貰ってばかりだったのに、私の方からは一度もあげたことないし、思い切って彼にもあげちゃおうと思って」
「それでね。相談があるのよ」
紗英子は、どこか浮かぬ表情になってしまった有喜菜には構わずに続けた。
「私たち、十日前が結婚記念日だったんだけど、今年はまだ何のお祝いもできていなくて」
「確か毎年、披露宴をしたホテルでディナーするとか話してなかったっけ?」
「そう。でも、今年は私が入院してたから」
「それは仕方ないよね」
「でも、今年に限って、直輝さんが何も言ってくれなかったの。いつもなら、決まって結婚記念日はどうするって訊ねてくれるんだけどね」
「かえって言わない方が良いと思ったんじゃない? 直輝は見かけによらず、繊細なところがあるから」
「そうよね。私も有喜菜の言うとおりだと思ったの。どうせお祝いできないから、黙っておこうとか気を回したんだと思う。それでね、今年は私の方からクリスマスイブに記念日と兼ねてお祝いしようって彼に提案するつもり。毎年、ずっとプレゼント貰ってばかりだったのに、私の方からは一度もあげたことないし、思い切って彼にもあげちゃおうと思って」