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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第4章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
 有喜菜はしみじみとした口調で言い、しばらく思案げに考え込んだ。ほっそりとした綺麗な両手を組み、テーブルに肘をついている。
 まるで女性雑誌の一ページを見るようなワンシーンに、紗英子もつい見惚れてしまうほどだった。その少し愁いを帯びた物憂げな表情といい、優美でありながら、どこか退廃的で官能的な雰囲気を漂わせる仕草といい、プロのモデルか女優のようだ。座っているだけで絵になるとは、まさに有喜菜のような女のことを言うのだろう。
 さしずめ、紗英子は親友の引き立て役か、良くて観客といったところ。悔しいけれど、今の有喜菜とでは比べものにすら、ならない。
「腕時計なんて、どうかしらね」
 突如として有喜菜が言葉を発し、紗英子はハッと息を呑んだ。
「腕時計?」
 我ながら、素っ頓狂な声が出て恥ずかしくなった。
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