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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第4章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
諦める―? 私は子どもを持つという夢を諦め切れるの?
自分に問いかけてみる。他人が聞けば、笑うかもしれない。子宮を失ったのだ。諦めたくなくても、諦めざるを得ないだろう。
何を今更、愚かなことを考えているのだと。
いいえ、諦めるものですか! 私はけして諦めたりはしない。赤ちゃん、私の赤ちゃん。どうやったら諦められるというのだろう?
「ねえ、どうやったら、諦められるの?」
それは直輝にというよりは、自分に向けて発せられた問いであった。
一瞬、直輝が息を呑んだ。
「おい、紗英子」
妻の尋常でない様子に気づいたのだろうか、直輝は整った顔を強ばらせたまま、なすすべもなく妻を凝視していた。
どれくらいの時間が流れたのか。
「紗英子」
優しく名を呼ばれ、紗英子はゆるゆると顔を上げた。多分、それは時間にしては、たいした長さではなかったはずだ。それでも、紗英子には途方もなく長い沈黙のように思えた。
自分に問いかけてみる。他人が聞けば、笑うかもしれない。子宮を失ったのだ。諦めたくなくても、諦めざるを得ないだろう。
何を今更、愚かなことを考えているのだと。
いいえ、諦めるものですか! 私はけして諦めたりはしない。赤ちゃん、私の赤ちゃん。どうやったら諦められるというのだろう?
「ねえ、どうやったら、諦められるの?」
それは直輝にというよりは、自分に向けて発せられた問いであった。
一瞬、直輝が息を呑んだ。
「おい、紗英子」
妻の尋常でない様子に気づいたのだろうか、直輝は整った顔を強ばらせたまま、なすすべもなく妻を凝視していた。
どれくらいの時間が流れたのか。
「紗英子」
優しく名を呼ばれ、紗英子はゆるゆると顔を上げた。多分、それは時間にしては、たいした長さではなかったはずだ。それでも、紗英子には途方もなく長い沈黙のように思えた。