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100万本の赤い薔薇
第4章 新たな関係と思惑
コンクールの日になった。
家族はバックヤードには入れないので、
茉莉子と長谷川は2階席のセンターに座った。

客席の照明が落とされると、
長谷川は茉莉子の手を握った。

何人かの後、結依の演奏になった。
ピアノの前に座り、
目を閉じて少し時間をおくと、
おもむろに鍵盤の上に指を置き、
演奏を始めた。

自分の音しか聴こえない。
金色に輝く光に自分が包まれているような心地で、
演奏を終えた。

茉莉子は立ち上がって拍手を送った。


更に何人かの演奏の後、
待ちに待った拓人の演奏になった。

茉莉子は身体を起こすように姿勢を正して、
ギュッと手を握り締めて演奏に集中した。

長谷川は、茉莉子の張り詰めたような様子に
ハッとした。

ミスタッチもある荒削りな演奏だったが、
エモーショナルで印象的なパフォーマンスだった。

演奏が終わると、茉莉子はホッとため息をついた。


コンクールの結果は、
結依が1位で、拓人が2位だった。


人が右往左往している楽屋で、
結依はそっと拓人に近づいて小さい声で言った。

「あの。
これ、山川茉莉子さんから渡すように頼まれました」
そう言って小さな紙袋を拓人に押し付けた。

「えっ?」と言って、
何かを訊こうとしたが、
結依は人混みを縫うように離れて消えた。

ほんの一瞬のことだった。
例え、その様子を見ていた人が居ても、
演奏者同士でプレゼントでも渡したのだろう位にしか見えなかったに違いない。


拓人は周りを見回してから楽屋の着替えブースに入ると、
急いで紙袋の中を見た。

中には拓人のイニシャルが刺繍された紺色の目立たないポーチと水色の封筒が入っていた。
ポーチの中には、携帯電話と充電器と鍵が入っていた。
そして、封筒は表に「拓人さんへ」とあり、
裏は赤い蝋で封がしてあり、
住所と名前と携帯番号が書いてある。
手元にナイフもないので、
慎重に封を切ってあけた。

美しい文字で、
簡潔な文章が書いてあった。


とても辛い話ですが、
真実を知りたいなら会ってお話しします。
連絡はこの携帯で。
私の番号は登録してあります。
本当に会いたかった。

大切な拓人さんへ
          山川茉莉子


今、すぐにでも会いたい。
電話もしたかったが、
外に出れば車が待っている。
また楽屋も含めてホール内は電波状態が良くなかった。

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