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100万本の赤い薔薇
第5章 再会
拓人は首を傾げながら12階で降り、
部屋番号を確認してから鍵を差し込んで開けた。
中から、犬の声がして、ビクッとしてしまうが、
見るとぬいぐるみのように小さい犬なので、
気にせず室内に入った。
白を基調としたシンプルな部屋には、
極端に家具やモノが少なく、
観葉植物と大きなグランドピアノが目立っていた。
他の部屋はと開けると、
シンプルで大きな寝室と、
自分の写真が飾ってある小さい寝室があった。
写真の自分と母親は、
楽しそうに笑っていた。
もう一つの扉を開けようとしたら、
チャイムが鳴ったので、開けてみたら、
さっきの女の子が立っていた。
「ピアノ弾かせてね」と言うと、
真っ直ぐグランドピアノまで進む。
犬が尻尾を振って纏わりつくので、よくここには来ているのだろうと思った。
結依は軽く指を温めてからピアノを弾き始めると、
すぐに拓人の存在を忘れて夢中になってしまった。
拓人はすることもないので、
小さな部屋に入り、
シーツも何も掛かっていないベッドに横たわって、目を瞑った。
遠くからずっとピアノの音がする。
良い演奏だと、拓人は思った。
電話のことが気になり、
珍しく5時に仕事を切り上げて急いで帰宅した茉莉子は、
玄関に大きなサイズのローファーがあるのに気づいてリビングに急いだ。
ピアノに向かっていたのは結依で、
呑気な声で、
「茉莉子さん、おかえりなさい」と言った。
「あの…拓人さんは?」
「拓人くんの部屋に入ったような感じだったよ。
自己紹介だけしときました。
3階に住んでて、ピアノ借りに来てるって。
お父さんのことは話してないけど」
「そう。判ったわ」
と言うと、茉莉子は小部屋のドアをノックした。
「はい」
と声がして、
中から拓人が出てきた。
既に自分の身長を越していた拓人は、
少し寝惚けた顔をしていた。
モカが茉莉子の周りを回りながら尻尾を振る。
拓人の脚にも纏わりついて、身体を伸ばす。
「拓人さん、大きくなったわね」
と茉莉子は涙ぐみながら声を詰まらせた。
「何から話せば良いのかしら?
何を知りたいの?」
と静かに訊くと、
「全部知りたい」
と答えた。
「判ったわ。長くなるけど。
取り敢えず着替えてくる。
お茶も淹れるわね」
部屋番号を確認してから鍵を差し込んで開けた。
中から、犬の声がして、ビクッとしてしまうが、
見るとぬいぐるみのように小さい犬なので、
気にせず室内に入った。
白を基調としたシンプルな部屋には、
極端に家具やモノが少なく、
観葉植物と大きなグランドピアノが目立っていた。
他の部屋はと開けると、
シンプルで大きな寝室と、
自分の写真が飾ってある小さい寝室があった。
写真の自分と母親は、
楽しそうに笑っていた。
もう一つの扉を開けようとしたら、
チャイムが鳴ったので、開けてみたら、
さっきの女の子が立っていた。
「ピアノ弾かせてね」と言うと、
真っ直ぐグランドピアノまで進む。
犬が尻尾を振って纏わりつくので、よくここには来ているのだろうと思った。
結依は軽く指を温めてからピアノを弾き始めると、
すぐに拓人の存在を忘れて夢中になってしまった。
拓人はすることもないので、
小さな部屋に入り、
シーツも何も掛かっていないベッドに横たわって、目を瞑った。
遠くからずっとピアノの音がする。
良い演奏だと、拓人は思った。
電話のことが気になり、
珍しく5時に仕事を切り上げて急いで帰宅した茉莉子は、
玄関に大きなサイズのローファーがあるのに気づいてリビングに急いだ。
ピアノに向かっていたのは結依で、
呑気な声で、
「茉莉子さん、おかえりなさい」と言った。
「あの…拓人さんは?」
「拓人くんの部屋に入ったような感じだったよ。
自己紹介だけしときました。
3階に住んでて、ピアノ借りに来てるって。
お父さんのことは話してないけど」
「そう。判ったわ」
と言うと、茉莉子は小部屋のドアをノックした。
「はい」
と声がして、
中から拓人が出てきた。
既に自分の身長を越していた拓人は、
少し寝惚けた顔をしていた。
モカが茉莉子の周りを回りながら尻尾を振る。
拓人の脚にも纏わりついて、身体を伸ばす。
「拓人さん、大きくなったわね」
と茉莉子は涙ぐみながら声を詰まらせた。
「何から話せば良いのかしら?
何を知りたいの?」
と静かに訊くと、
「全部知りたい」
と答えた。
「判ったわ。長くなるけど。
取り敢えず着替えてくる。
お茶も淹れるわね」