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100万本の赤い薔薇
第5章 再会
先生は、時々別宅に来たけど、
それは大抵貴方の健康診断とか予防接種で来るだけだったから、
貴方は先生のことを「ちっくんするヒト」って呼んでた。

貴方が2歳になると、
また、時々私を本宅に呼ぶようになったの。
あの…
2人目をって考えたのか、
そう言うタイミングの時だけ呼び出して、
毎回睡眠薬飲まされてたわ。

最初は、理由は判らなかったの。
私ね、どうしてもそれが嫌で、
抵抗したくて、子供を授からないお薬を飲むようにしたの。

2年くらい経った時にね、
睡眠薬の効き目が悪くて、目が覚めてしまって…
それで…


その時の光景がフラッシュバックした。
茉莉子は身体の震えが止まらず、涙も抑えられなくなってしまった。
そのまま気を失ってしまい、テーブルに身体を預けるようになり、
マグカップが床に落ちて割れた。

拓人は慌てて部屋に入って結依を呼んだ。


「ごめん。お母様が倒れてしまって」
と言うと、結依は即座に寝室からブランケットを出してテラスに行き、茉莉子に掛けて抱き締めて背中を撫でた。


「何なの?
茉莉子さんに何を言ったの?」
と凄い剣幕で拓人を怒る。

「何も言ってないよ。
こっちが話を聞いてただけで」
とオロオロする。


「良く判んないけど、
茉莉子さんは毎日拓人くんのことを想って、
ずっと会いたがってたのに、
泣かしちゃ駄目でしょう!」と、
母親のような顔で拓人に説教をする。


暫くすると、茉莉子がゆっくり意識を取り戻した。


「あー!良かった。
お父さん居ないし、拓人くんと私じゃ、とても茉莉子さんを運べないから、目が覚めなかったらどうしようかと思った」


「ごめんなさい」


「お部屋に入りましょうか。寒くなってきたでしょ」と茉莉子が立ち上がるので、
拓人と結依は左右から茉莉子を支えた。



室内に入ると、モカが心配した様子で、
クンクンと鳴いて茉莉子の処に駆け寄ってきた。


「続きをお話しする前に、
お夕食にしましょうか?
拓人さんは、どんなものが好きなの?」

「鶏の唐揚げとフライドポテト!」

「お子ちゃまだね」と結依が言うので、
拓人は少し膨れっ面になる。


「それなら簡単だから、すぐに用意するわね」


その時、携帯が鳴った。

「茉莉子さん、お父さんからだよ」

「あら、手が離せないから結依ちゃん出てくれる?」

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