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100万本の赤い薔薇
第5章 再会
長谷川の電話に出た結依は、

「今日は帰れなくなった。戸締り気をつけるように」と言われたので、そのまま茉莉子に伝えた。

「あら。
若いお嬢様が1人で一晩過ごすなんて!」と言いながら、
リダイヤルしたが、電波が届かない所にいるか電源が入っていませんと機械の音声が流れるだけだった。

「お父様、電話に出れないみたいだけど、
1人で誰も居ないお家で一晩過ごすのは心配だから、
今日はここに泊まってね。
後で連絡しておきますから。
明日の朝、慌てないように、
学校の支度と制服も持ってきてね」と言った。


「はーい」と言って、結依は一度自分の部屋に戻る。
せっかく親子水入らずなのに、良いのかな?とも思ったけど、
デリカシーのない男子と2人より、
私が居た方がさっきみたいに役に立つかもと考えて、
荷物を纏めて茉莉子の部屋に上がった。


「拓人さん、今日はどうする?」と茉莉子が訊くと、

「もう、あの家には帰りたくない」とキッパリ言うので、
「だったら、連絡入れておきましょう。
未成年者を誘拐って言われても困るから」と言って、

「病院も自宅も、電話番号忘れちゃったわ。
あ、そうだわ!」と言って、
拓人に渡して取り上げられた携帯電話にリダイヤルした。

すぐに先方は電話に出た。
先生の姉だった。
茉莉子は念の為、録音をしながら電話した。


「もしもし。
拓人さんは、こちらにおりますが、
もう帰りたくないと言ってますので」

「何を言ってるの?
この泥棒猫!!
弟だけじゃなくて、拓人さんまで盗るつもりなの?」
と、訳の分からないことを言いながら、
怒り狂っているのは判った。

「ちょっと変わって」と拓人が言うと、
「もう二度とその家には帰らない。
お前らとも二度と会いたくない。
お前らを絶対に許さないからな」
と言うと、拓人は肩で息をしながら電話を切った。

その後、何度も電話が掛かってくるので、
困惑していると、
拓人が着信拒否の設定をしてくれた。


「これで静かになるね」
と言って笑った顔は、
子供の頃の面影があった。

そして、
「辛かったら、すぐに話さなくて良いよ。
判ったんだよ。
お父様と良子さん、男女の関係なんでしょ。
そういうとこ、見たしさ。
本当にゾッとした。
吐き気がしたよ。
だから、お母様が出て行ったのも仕方なかったって思ってる」




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