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100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
翌朝は、3人同じ時間に家を出た。
思いの外、拓人が早起きで、一緒にモカの散歩後、
朝食を取れたのが嬉しかった。

結依は朝食より朝シャンなのが、女の子らしい。


JRの駅まで一緒に歩き、
2人を改札で見送ると、会社に向かった。


1日休んでしまったので、
少し溜まったメールの処理から仕事に入った。

社長が出社すると、
いつもの業務に連絡をする前に、
息子がこちらに戻ってきたことと、
親権を取る為に弁護士事務所に出向いたことを伝えた。

社長は、自分のことのように喜んで、
何かあったら力になるから言いなさいと言った。

茉莉子は丁寧に頭を下げた。
そして、弁護士から息子を奪還される可能性を指摘されたことを伝えて、帰社時間を少し早めさせて貰えないかと言った。
駅まで迎えに行きたかったからだ。

「勿論!
危ないようなら男性社員をつけようか?」と言うので、
「そこまでしなくても大丈夫だと思います。
私、合気道を嗜んでおりますし」と笑った。




夕方、定時より1時間早く仕事を切り上げると、
一度帰宅して着替えると、モカを連れてJRの駅に向かった。

仕事用のヒール靴より、
スニーカーの方がいざという時役立つと思ったからだ。


改札で待っていると、拓人の姿が程なく見えた。
手を振ると、拓人は嬉しそうに手を振ってくれる。

2人並んで、自宅までのんびり歩いた。


途中、図面ケースを持った健太とばったり会った。


「あら!健太さん、ご機嫌よう」

「こないだはすみませんでした。
急ぎの締め切り入っちゃって」
と口籠もりながら謝る。

「どういたしまして。
あのね、ちょっと立て込んでしまったので、
水曜日、会えなくなりました。
ごめんなさい」

「いえ、良いんです」

「ギターも教えるって言ってたのに、
ごめんなさいね」

「あの…息子さんですか?」

「ええ。拓人です。
こちらはデザイナーされてる田中健太さんよ」

二人は、ぴょこんとお辞儀をし合った。

「引き留めてしまって、ごめんなさい。
納品じゃなくて?」

「あ、はい。
そんじゃ、失礼します」
と言って、健太はスタスタ歩いて行った。


拓人が不思議そうな顔をするので、
「そこにある小さなバーに時々立ち寄ってたの。
その時にご一緒したのよ。
長谷川さんとも、そこで出会ったの」と説明した。
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