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100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
同じ頃、長谷川はようやく自宅に向かっていた。
仕事、というわけではなく、入院していたのだった。


元妻のゴリ押しでパイプカット手術をさせられたが、
茉莉子と出会って、
出来たら茉莉子に一から母親をやって貰えたらと考えていた。

勿論、拓人のことはずっと変わらず愛し続けてきていただろうけど、
楽しい育児の途中で子供から引き離されてしまったことを考えた。
普段、家事をしたり結依に接したりしている処を見るにつけ、
本当に茉莉子は「母性の塊」のような女性で、
自分のことより、
子供のことや長谷川のことを心配するような人だった。

だからこそ、
茉莉子に最初から子育てをして貰いたいと思った。

それに、愛されてないのに子供を授かったとずっとそう思っていることも、不憫で、
自分なら心から茉莉子を愛してあげられると思った。

更に…自分自身の為にも。
愛した証としての二人の子供が欲しいと心の底から考えたからだ。

勿論、血を分けていないとはいえ、
結依のことは大切な自分の娘だと思っている。

今後、一緒に住むであろう拓人も、
息子だと思えるよう接するつもりだ。

でも、やっぱり、
自分の分身というか、
血を分けた子供を、茉莉子との間に授かりたいと思ったのだった。


パイプカットの手術をした病院で、
再度「繋ぐ」手術をした。

精子は作られているから、
道を修復すれば、理論上は妊娠させることが可能になる。

ただ、手術から年月が経ってしまったこともあり、
着実に…という訳ではないと説明を受けた。
それと、勃たなくなる人もいるらしい。
男は単純だが、デリケートな生き物だ。


日帰り手術で気軽にと思ったけど、
痛さに弱くデリケートなあまり、
体調を崩してしまい、そのまま入院になってしまった。

茉莉子や結依には言わず、
独りで辛い一夜を過ごして、
更にもう1日、入院してしまった。


でも、拓人も戻ってきたというし、
なにより、早く茉莉子に会いたい!

そう思った長谷川は、とにかく家路を急いだ。
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