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100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
「電車の中は人目があるから拉致とかは出来ない。
最寄駅と学校の間は、なるべく学生がたくさん歩いている時間帯に通るといい。
朝、ここから駅までが、都会のど真ん中で人通りが少ないな。
帰りは結構人が歩いているだろうから…
拓人くんが嫌でなければ、
俺が一緒に朝、駅まで歩くよ」

「私も一緒に歩くー!」と結依も言う。

「結依ちゃんにまで、何かされないかしら?」と眉を顰めると、
「みんなで歩けば怖くないよ」と明るく笑った。

拓人が口を開いた。

「みんな、大袈裟だな。
多分、お父様は僕のことなんて気にしてないよ。
あのオバさんだって、お父様が居れば良いじゃないかな?」と言う。

「あのオバさん?」
結依が不思議そうな顔をするが、茉莉子は遮って言った。


「そうね。
みんなで歩けば怖くないわ。
私、合気道やってるしね」と、ウィンクした。

「えー。合気道?
なんかカッコいい!」と結依が目を丸くして言った。

「別に攻撃する訳じゃないのよ。
身を守りながら、相手を止めるだけ」と、
恥ずかしそうに茉莉子が続けた。


食器を運んで食洗機に入れるのを、
結依が拓人に教えながらやってくれた。

家ではお手伝いさんがやってくれてたので、
拓人にとっては新鮮なことばかりだ。

「働くお母さん持ってるなら、
お手伝いくらいしないとね!」と、
拓人に言う結依と、
「なんだよ。お湯で流して機械に入れるだけじゃん」と口ごたえをする拓人は、姉弟みたいで微笑ましかった。


「今日は、美容室に行く日なの。
留守にしても大丈夫かしら?」
と、長谷川に尋ねると、
「勿論だよ。綺麗にしておいで!」と言って髪を撫でた。

「そうだ!結依ちゃんも連れて行っても良いかしら?」
と言うと、
結依の方が、
「嬉しい〜!!いつも適当なとこに行ってたの」と、
茉莉子の周りをくるくる回って喜んだ。


「じゃあ、その前に、
モカちゃんのお散歩に行ってくるわね」

「私も行く!」

「狡いよ。僕も行く!」

「じゃあ、俺も行く!」と言って、
4人立ち上がった。

結依が拓人を引っ張って行って、
「リードはいつも、ここにあるからね」
と教えると、
モカが嬉しそうに2人についてきた。

「はい。つけてみて!」

「それくらい出来るよ」と膨れると、
「すぐにムキになるんだから。お子ちゃまね!」と、
頬をつついた。
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