この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
マンションの下まで戻ると、
「先に荷物を待ってお部屋に戻っていてくれる?
お洋服はタグを切ってからクローゼットに掛けておいてね。
ちょっと寄りたい処があるから」と茉莉子が言うので、
結依は一足早く家に帰った。
3階の部屋に戻ると、長谷川が顔も上げずに「おかえり」と言いながら、
パソコンに向かって仕事をしていた。
土曜日なのに、珍しいと思った。

「上でピアノ弾いてくるね」と言うと、
茉莉子に言われた通り、
服のタグを切りクローゼットに掛けてから、
その中の一枚、ゆったりしたワンピースに着替えて、
もう一度長谷川の処にもどった。


「ねえねえ、お父さん!
ちょっと見てよ」と声を掛けた。

顔を上げて、一瞬、言葉を詰まらせた。


「茉莉子かと思ったよ」

確かに服装だけでなく、髪や雰囲気も茉莉子に似ていた。


「あのね、美容室の後、茉莉子さんがたくさんお洋服を買ってくれたの。
タグはこれだよ。
ちゃんとお礼言ってね!」
と捲し立てる結依は、いつもの結依だった。


「おう」
と言いながら、タグを見た。
考えてみたら、結依の服なんて、
一度も買ったこともなくて、
それが、高いか安いかも知らなかった。


「スーパーや量販店のに比べたら高い服だよ。
でも、丁寧に手入れして大切に着れば、
寧ろ安いって茉莉子さんが言ってた。
茉莉子さん、お母さんみたいで嬉しいな。
お母さん以上だよ。
いつも、お金渡されて、
1人で買い物してたんだもん」と涙ぐんでいるのを見て、
長谷川は立ち上がって結依を抱き締めた。


「本当に酷い両親だったよな。
結依、ごめん」


「大丈夫!
その分、大金星だよ。
お父さんと茉莉子さん、絶対に一緒になってね!
生意気な拓人くんが居ても、
この際、許すよ」と、
結依が明るく笑う。


「さて、ピアノ弾いてくる。
拓人くんと順番に弾くから、
弾ける時間、減っちゃったしね。
あ、茉莉子さんの部屋の防音ルームのピアノ使えば良いか」
と言いながら、
バタバタと上に向かってしまった。


結依が明るいのは、
寂しかった裏返しなのかもしれないなと、
長谷川は考えながら仕事に戻った。

思いがけず、日帰りのつもりがそのまま入院したせいで、
仕事が溜まっていた。
/245ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ