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100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
その時、エレベーターが止まる音がして、
中から元夫とその姉の良子、そして弁護士らしい初老の男性が降りてきた。

その後の出来事は、まるでスローモーションのように茉莉子は感じた。

良子は茉莉子のことを見ると、鬼のような形相になり叫んだ。

「この泥棒猫!
あんたのせいで、何もかもめちゃくちゃよ!
拓人さんも言うことを聞かない。
それに!
弟は…私だけのものなのにっ!!」
そう言って、バッグから何かを取り出して茉莉子に詰め寄ろうとした。

その大声に反応して、室内から拓人たちが出てくる。

良子はニヤリと笑うと、
「あんたを一番苦しめる方法、判った。
拓人さんを殺しちゃえば良いのよね」と言う。

「拓人さん、部屋に戻って!」と言いながら、
茉莉子は拓人をドアの向こうに押し戻そうとした。

良子の左手が、茉莉子の服を掴んで引っ張る。

チクリ。
脇腹に少し痛みを感じたような気がした。


私…刺されるの?

そう思いながらゆっくりと振り向くと、
先生が…元夫が、自分と良子の間に身体を滑り込ませていた。
脇腹から血が流れて、包丁の柄のようなものが突き刺さったままになっている。


時間が一瞬、止まったようになった。
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