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100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
良子は気狂いじみた顔で笑って、
「ほら。弟はあんたのことを庇ったわ。
あんたがいなければ!!
弟は私のものだったのに」と言うと、
バッグから外科用のメスのような物を出すと、
いきなり自分の頸動脈をかき切った。
激しく出血しながら倒れた。
遅れて警備員が、駆けつける。
茉莉子はバッグからタオルハンカチを出しながら、
元夫の傷口を止血しようとしたが、
止まる気配はない。
持っていた上着でも止血をしようとする。
良子は…もう手遅れだろう。
「救急車を!早く」
と言いながら、初めて元夫のことを、
先生ではなく、名前で呼んだ。
「茉莉子…さ…ん。
済まな…かっ…」
「喋らないで。
でも意識を保ってください。
拓人さんもここに居ますから!」
と気丈に振る舞うが、
むせかえるようなような血の匂いで、
茉莉子の方が意識が遠のきそうになる。
「君はいつも…
優しかっ…」
救急車が近づき、止まる音や、
駆けつける足音が聴こえる。
「言えなかった…
愛して…」
茉莉子は冷静に、
「そちらの女性は蘇生しても無駄です。
頸動脈を自分で切って倒れたまま、
既に動けない状況。
こちらの男性を助けてください。
先程脇腹を刃物で刺されました。
抜くと出血が酷くなると思い、そのままにしてあります。
意識もあって、脈も弱いながらあります」と伝えた。
茉莉子の毅然とした態度の一方で、
周りの人間は動けないでいた。
向こう側の弁護士に至っては、腰を抜かしたように、
端のベンチにへたりこんでいる。
警察も到着して、周囲が慌ただしくなる。
救急隊員が怪我の状況を確認しながら、
先に元夫を担架に載せながら、
「ご家族の方は?」と言う。
茉莉子は立ち上がろうとしたが、
そのまま倒れそうになり、
慌てて拓人と佐々木弁護士が支えた。
「そいつに家族は居ないよ。
そこに横たわっている女が、唯一の肉親だよ」と拓人が言った。
茉莉子がゆっくり目を開けると、
「私…離婚はしましたが、元妻です」と言う。
「お怪我はされてないですか?」と、他の隊員が訊く。
何しろ血塗れになっていたからだ。
「大丈夫です」と言ったが、
茉莉子の身体の震えは止まらなかった。
「ほら。弟はあんたのことを庇ったわ。
あんたがいなければ!!
弟は私のものだったのに」と言うと、
バッグから外科用のメスのような物を出すと、
いきなり自分の頸動脈をかき切った。
激しく出血しながら倒れた。
遅れて警備員が、駆けつける。
茉莉子はバッグからタオルハンカチを出しながら、
元夫の傷口を止血しようとしたが、
止まる気配はない。
持っていた上着でも止血をしようとする。
良子は…もう手遅れだろう。
「救急車を!早く」
と言いながら、初めて元夫のことを、
先生ではなく、名前で呼んだ。
「茉莉子…さ…ん。
済まな…かっ…」
「喋らないで。
でも意識を保ってください。
拓人さんもここに居ますから!」
と気丈に振る舞うが、
むせかえるようなような血の匂いで、
茉莉子の方が意識が遠のきそうになる。
「君はいつも…
優しかっ…」
救急車が近づき、止まる音や、
駆けつける足音が聴こえる。
「言えなかった…
愛して…」
茉莉子は冷静に、
「そちらの女性は蘇生しても無駄です。
頸動脈を自分で切って倒れたまま、
既に動けない状況。
こちらの男性を助けてください。
先程脇腹を刃物で刺されました。
抜くと出血が酷くなると思い、そのままにしてあります。
意識もあって、脈も弱いながらあります」と伝えた。
茉莉子の毅然とした態度の一方で、
周りの人間は動けないでいた。
向こう側の弁護士に至っては、腰を抜かしたように、
端のベンチにへたりこんでいる。
警察も到着して、周囲が慌ただしくなる。
救急隊員が怪我の状況を確認しながら、
先に元夫を担架に載せながら、
「ご家族の方は?」と言う。
茉莉子は立ち上がろうとしたが、
そのまま倒れそうになり、
慌てて拓人と佐々木弁護士が支えた。
「そいつに家族は居ないよ。
そこに横たわっている女が、唯一の肉親だよ」と拓人が言った。
茉莉子がゆっくり目を開けると、
「私…離婚はしましたが、元妻です」と言う。
「お怪我はされてないですか?」と、他の隊員が訊く。
何しろ血塗れになっていたからだ。
「大丈夫です」と言ったが、
茉莉子の身体の震えは止まらなかった。