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100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
部屋に戻った長谷川は、
肝心な時に一緒に居れないことを心から悔しく思った。

そして、もっと茉莉子と拓人のことを護る為には、
やっぱり結婚するしかないと決意した。


結依が帰宅していて、自室で勉強していた。

さっき、茉莉子を連れ帰った時に部屋に居なくて良かったと思った。
流石に血塗れになった茉莉子は見せれない。


「今日は早かったんだね」と言われたので、

「今日はピアノは良いのか?」と質問で返した。

「先に勉強しちゃおうと思ってね。
でも、そろそろ終わるから…」

「あっ!
茉莉子、具合が悪くて寝てるんだ」

「えっ!
大丈夫かな?
病院は?
お薬は?」
と言いながら、今にも上に上がって行こうとする。

「あ!
拓人がシャワーしてたぞ」

「平気平気!
お子様じゃん!!」


そう言いながら上に行くので、
長谷川も慌てて着替えて追いかけた。


拓人はリビングのソファに憮然とした顔で胡座をかいて座っていた。

茉莉子が身体を起こしたような気配がしたが、
すぐにドスっという音が続いたので、
慌てて寝室に入ると床に倒れていた。

ちょうど部屋に戻った長谷川に頼んで、
もう一度茉莉子をベッドに横たえさせて貰いながら、
そんな力もないのかと、無力感を覚えていた。

真っ白なバスローブに血のようなものが滲んでいるのを見た長谷川は、ベルトを外して脇腹を見ると、身体を洗った時には気付かなかったが薄っすら真っ直ぐに浅い傷があって、そこから僅かに出血していた。
ワンピースの切れた処あたりだ。
刃先が掠めていたのか。
倒れた時に傷口が開いたのかもしれなかった。

拓人に、
「そこのクローゼット、救急箱取って!」と言い、
消毒して薬を塗りガーゼで覆った。

「茉莉子さん、大丈夫?
髪の毛も、濡れっぱなしだし、どうしたの?
熱とかあるの?」と結依も心配している。


「茉莉子さん、座れるなら、
髪の毛、乾かすよ」と、
ドライヤーとブラシを手に、
結依が寝室に入る。
茉莉子は微笑みながら、何とか起き上がって、
部屋の片隅のデスク前に座った。

鏡越しに結依にお礼を言うと、
結依は器用にピンで止めながら髪を乾かしていった。

「この前、美容室でワザを覚えたから」と言いながら、
少しずつ髪を乾かしていった。

「ほら、サラサラになったよ」と、
満足そうに結依は茉莉子に笑いかけた。

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