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100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
茉莉子は玄関の前でインターホンを押した。

「はーい」
と結依が出たので、
「お塩、持ってきて」と言った。

ドアを開けると喪服姿の茉莉子が立っていて、
「お塩を掛けてくれる?」と言うので、
ホーローの容器に入ったフランス産の粗塩を振りかけた。


静かに頷くと、茉莉子は着物を払ってから、
室内に入った。


長谷川はソファに座っていたが、
茉莉子を見て、
「おお。
なんかすごく、色っぽいな。
あ、不謹慎でごめん」と言う。

茉莉子は笑いながら、
「着替えてきますね」と寝室に入った。


着物と帯、長襦袢を衣桁に掛けクローゼットのドアに吊るす。
足袋や肌着を一纏めにする。
部屋着に着替えて纏めていた髪を降ろした解かしてから、
耳の後ろに珍しく香水をそっと振った。
なんとなく、お線香臭い気がしたからだ。

洗濯物を持って洗面所に行くと、
やっぱりお線香臭さが気になって、
シャワーを浴びた。


全て終わった!
そう思えた。

リビングに戻って、長谷川の隣に座って、
長谷川にもたれかかった。


「私、頑張ったよ」
そう言いながらじっとしてるので、
長谷川は腕を回して背中や髪を撫でた。

拓人も、部屋から出てきて、
そんな2人を見て、茶化そうとしたら、
結依が人差し指を口に当てて、
「しぃー」と言った。


茉莉子は、あどけない顔で眠っていた。
目尻にはうっすら涙の痕があった。


「動けないんだけど?」と長谷川が唇だけで言う。

「夕ご飯、どうする?ピザとか?」

「えー!昨日もピザだったからやだよ」

「私がなんか作ってみようか?」

「えっ?結依、ご飯なんて作れるの?」

「お父さんの携帯、貸してよ。
ネットでレシピ見ればなんでもいけるでしょ?」

動けない長谷川から携帯を受け取ると、
「暗証番号は?」と結依が訊いた。

「結依の誕生日だよ」と言うので、

「ふーん」と拓人が言った。

「そんな推測されやすい数字はダメじゃん?」と言いながら、
結依はあれこれレシピを検索しながら、
冷蔵庫をチェックし始めた。


「よし!これなら作れる」と選んだのは、

「お好み焼き」だった。

「それって、おかずになるの?」

「判んないけど、単体でイケるよ。
小麦粉入ってるから、主食っぽいしさ。
お肉も野菜も入ってるし文句言わないの!」と言って、
野菜をぎこちなく切り始めた。
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