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100万本の赤い薔薇
第7章 もう一つの嵐
「健太さん、やめて…」
と言おうとしたが、声が思うように出せない。

脚の間に身体を入れるようにして、
両脚を開かせようとするのを必死で止めようと身体を捩るが、
力では敵わない。

「お願い…やめ…」

ストッキングも破られ、ショーツを降ろそうと手を掛けられた瞬間、
茉莉子は気を失ってしまった。

急に力が抜けたのを感じて、顔を見ると、
茉莉子は目尻から涙を流しながら静かに眠るようになっていた。

顔は真っ白になっている。


健太は、そのままショーツを脱がせて、両脚を広げた。
外からの月明かりで見ても、
淡い色で美しいのが判った。

指を入れようとしたが、きつく閉じてしまっている。

舐めてから、唾液で濡らした指を入れようとしても、
なかなか入らないほどだった。


すると突然、
自分はなんてことを!
という罪悪感に襲われてしまった。

それほど、茉莉子は気高く神聖な存在に感じた。

簡単に脚を開き、自分に跨って腰を振るような女とは違い過ぎた。
何でもやって、何でもやらせて、
ただ欲望を果たすだけの存在ではない。

そして何より、
茉莉子の向こうには、
あの長谷川ではなく、拓人という少年の姿が見えた。

茉莉子を自分のモノにするということは、
茉莉子1人ではなく、あの少年も含めて背負うということだ。
自分にはその覚悟も力量もない。

そう思ったら、急速に昂まりも、気持ちも萎えていった。



健太は茉莉子の下着を直して、ワンピースのリボンを結んで、
そっと茉莉子にキスをした。

そして、
「さようなら、茉莉子さん」と呟くと、
部屋を出た。



茉莉子が目を醒ますと、暗い部屋の中には、
パソコンのディスプレイだけが光っているだけで、誰も居なかった。

服を整え直して、コートを羽織ると部屋を出てタクシーに乗った。
帰宅すると、すぐにシャワーを浴びた。
繊細なレースはあちこち破れていた。

掴まれた手首が赤くなっていた。
下半身を洗いながら、涙を流した。


どうして?


自分自身に呟いた。


どうして、部屋についていってしまったのかという後悔と自分の迂闊さに対する怒り。

健太のことは、男性として見ていなかった。
でも、彼は違っていたのかという驚き。

そして…長谷川に対する申し訳なさ。


茉莉子は混乱して、どうして良いか判らなかった。

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