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100万本の赤い薔薇
第10章 華燭の祭典
ドレスについては、絶対に譲らない!と、
茉莉子が勤める会社の社長の奥様が言っていると長谷川から聞いた。

お子様が居ないことと、
茉莉子の亡くなった父親と全寮制の学校から大学まで同級生だったという社長が、夫婦で茉莉子のことを子供の頃から可愛がっていたとのことだった。

フランスで刺繍を習うのを勧めたのも、社長の奥様だったという。

「何かに打ち込むと、辛いことを忘れられるわ。
特に海外なら、嫌なことを思い出さないし、
何か言ってくる人も居ないから!」

確かにその通りだったと、茉莉子は今でも感謝していた。


奥様は、コネクションを使って、
フランスのオートクチュールを扱う工房でドレスとベールを特注した。
デザインも考えて、3ヶ月という短い納期で依頼して、
ようやく届いたという。

フランスでの刺繍学校時代の友人も、手伝ってくれたということで、
ビデオレターのデータも入っていた。


そして、指輪を買いに行った時に、
「結婚式の時は知らせてください」と言っていたジャン・ピエールに連絡をすると、
特別なティアラを用意してくれるということになった。

自分の由緒正しい実家に代々伝わるものを、
わざわざフランスに戻って持ち帰ってくれていた。


バーのママとマスターにも声を掛けたら、
とても喜んでくれて、
「何を着たら良いかしら」と大騒ぎになった。


長谷川は健太にも連絡した。
来るかどうかは判らないが、
茉莉子を大切に想ってくれていた健太に、
茉莉子の幸せな姿を見せたかったからだ。


桜を観る予定だと訊いたので、
上海を案内してくれた茉莉子の顧客夫妻にも連絡したら、

「勿論伺います。楽しみだ」というメールが戻ってきた。



ほぼ、連絡と準備は終わった。
あとは、当日を待つばかりだった。

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