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100万本の赤い薔薇
第10章 華燭の祭典
そんなサプライズ作戦と平行して、
長谷川もサプライズを用意していた。
というより、今後を考えて最良なことをしたいと考えて動いていた。


子供が増えると茉莉子にも負担が増えるから、
そこを何とかしたかったし、
自分も育児を含めた家族のことをもっとやりたいと思って、
転職しようとしていた。


外資系は忙しいことと、働く時間帯もズレることが多く、
また、立場上、会食などもあり、夜が遅いのが気になっていたからだ。


それで、ずっと非常勤で教えていた大学に相談したところ、
ちょうど同じ分野の教授が退官することと、
その専門職の下が不在のままだったことが判った。

そういえば、その教授でもある恩師が何度も、大学に来ないか?と誘ってくれていたことを思い出して、ご挨拶に行ってみると、大変喜んでくれた。


4月から異例の教授待遇でとなり、
給料は下がるが、これまでより時間にゆとりが出来て、
家でも仕事が出来ることに感謝した。

これまでの蓄えと運用に回している分で、
生活レベルも変わらない。
というか、早期リタイアしても良いくらいだったが、
まだまだ、仕事もやって家族を養いたいと思っていた。


恩師ご夫妻にも結婚のことを伝えて式に招待すると、
こちらのこともとても喜んでくれた。

聞けば1人息子さんはやりたいことがあると言ったきり、
音信不通だというので、
教え子だった自分のことを目に掛けてくれてるのは、
子供のように考えているかもしれないとも感じた。


辞めるとなると、会社の方でも引き継ぎもあり、
バタついてはいたが、
嬉しい忙しさでもあった。


また、自分をあのバーに連れて行ってくれた阿部にも連絡した。


「なんだよぉ。俺のおかげじゃないのか?」と言いながらも、
喜んでくれた。

自分が陽子のこと、結依の出生のことで荒れて山に登っていた時も、
心配を掛けていた。
何度か、冬山にも付き合ってくれたり、
黙って酒を一緒に呑んでくれた旧友だ。

あの時、バーに連れて行ってくれたことで、
茉莉子と再会出来たことを、
心から感謝していた。
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