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100万本の赤い薔薇
第10章 華燭の祭典
最後の演奏が終わると、
長谷川と茉莉子は結依と拓人も伴い、
前に立った。


そして、本日のお礼
これまでのことへの感謝
更に、今後も家族5人を見守っていただきたいと挨拶をして、
この宴を締めた。


お見送りにと、4人はブーケやギフトを手に、扉の処に立った。


中には、記念品の他、茉莉子が刺繍した美しいイニシャル入りのポーチや、拓人と結依が焼いた焼き菓子などが入っていた。

記念品は、カルティエのペンにはそれぞれのイニシャルと感謝を表す文字が刻印されていた。


全員、退場したと思い、ふと目を上げたら、
片隅に健太が立っているのを見つけた。

ジーンズに黒いタートルネック姿で、
微かに美術室みたいな匂いがしていた。


「まあ、健太さん。
いらしてくださったのね!」と歩み寄ると、
健太は後退りしてしまう。

何と言って良いかも判らず、
本当はこっそり帰ろうと思っていたけど、
演奏が余りにも凄すぎて動けず、
結果、出損なっていたからだ。


「あの、これ。お祝いです。
おめでとうございます。お幸せに」

それだけ一気に言うと、待っていた大きな布袋を拓人に渡した。


「あ!これを!」と、
茉莉子と結依がギフトの入った紙袋とブーケを渡した。


健太はぴょこんとお辞儀をして、
スタスタと立ち去ってしまった。
振り返ることもなかった。
泣いてしまっていたから、振り返れなかったのだった。


帰りの新幹線で、しばらく寝た。
ギリギリまで描いていてここのところ寝てなかったからだ。

京都でハッと目が覚めて、紙袋を開けた。
健太のイニシャルが刺繍されたポーチを見て、
その刺繍部分を撫でながら、泣いた。

そして、中の焼き菓子を食べて、また泣いた。

でも、これで良かったんだ。
やっぱり、茉莉子さんの隣に立つのは自分じゃなかった。

茉莉子さんは、夢の国の妖精だった。

そう思えた。

妖精に不埒なことをしなくて良かった。
最後までやってたら…きっと、切り落とされてたな。

そんなことを考えたら、
なんだか、おかしくなって笑った。

隣の席の女性が、泣いたり笑ったりする自分を見て、
困惑してるのに気づいた。

「スミマセン。
 好きだった人が結婚しちゃって。
もう大丈夫です。
あ、これ良かったらどうぞ」とブーケを渡した。

こんなの持ち帰ったら、オカンが何かと思うからな。
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