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100万本の赤い薔薇
第10章 華燭の祭典
「ただいま。良い匂い!カレー?」と、
拓人がはしゃいだが、
「それは明日の分よ」と言われてがっかりしていた。
「一口だけ!」と強請って、
「まだ、味が染みてないし美味しくないわよ」と言われた。
確かにいつもよりあっさりしていた。
「やっぱり家が落ち着くね」と言いながら、
賑やかな夕食になった。
翌日、長谷川の実家に行くと伝えると、
やはり結依と拓人は家でピアノを弾いていたいと言うので、
「お昼はカレーを食べててね。
夕方には戻るから」と茉莉子は言った。
長谷川の父親の家は、男の独り暮らしの割には綺麗に片付いていた。
本以外のモノが少ないせいだろう。
茉莉子が手土産を渡して、念の為にと持参した茶器で、丁寧に玉露を淹れた。
一煎目は甘さを引き出し
二煎目は苦味を引き出す
見事な味の変化に、
「うむ」と思わず声が出てしまった。
「亡くなった妻は煎茶道と茶道を教えていて、
よくこのようなお茶を出されたな。
いつも、別に渋いお茶をがぶ飲みしたいのだがと言って、
笑われていたよ」と言った。
「亮太、お前はいつも、こんなに美味い茶を出して貰ってるのか?」
「茉莉子が出してくれるもので、不味いものなんてないよ。
水、出されても美味しいから。
綺麗に拭き上げたグラスで出してくれるしな」と言う。
「まあ。
でも時々、お父様みたいに、
がぶ飲みしたいとか、
ガサツに大皿で良いよとか、仰るけどね?」と言って、
父親の方を向いてにっこり笑った。
「茉莉子さん。
こんなにガサツで気が利かない息子と一緒になってくれて、
ありがとう」
と、父親は頭を下げた。
「とんでもありません。
亮太さんほど優しくて、私と息子の拓人、
それに結依ちゃんを大切にしてくださってる方は、
他にもおりません。
私、とても幸せ者だと思っております」
と言った。
「結依か…」
「あの?」
「聞いてるんだろ?結依のこと。
私はね、どうしても陽子さんを受け入れられなかったし、
結依のこともね。
心が狭いんだろうな」と言った。
拓人がはしゃいだが、
「それは明日の分よ」と言われてがっかりしていた。
「一口だけ!」と強請って、
「まだ、味が染みてないし美味しくないわよ」と言われた。
確かにいつもよりあっさりしていた。
「やっぱり家が落ち着くね」と言いながら、
賑やかな夕食になった。
翌日、長谷川の実家に行くと伝えると、
やはり結依と拓人は家でピアノを弾いていたいと言うので、
「お昼はカレーを食べててね。
夕方には戻るから」と茉莉子は言った。
長谷川の父親の家は、男の独り暮らしの割には綺麗に片付いていた。
本以外のモノが少ないせいだろう。
茉莉子が手土産を渡して、念の為にと持参した茶器で、丁寧に玉露を淹れた。
一煎目は甘さを引き出し
二煎目は苦味を引き出す
見事な味の変化に、
「うむ」と思わず声が出てしまった。
「亡くなった妻は煎茶道と茶道を教えていて、
よくこのようなお茶を出されたな。
いつも、別に渋いお茶をがぶ飲みしたいのだがと言って、
笑われていたよ」と言った。
「亮太、お前はいつも、こんなに美味い茶を出して貰ってるのか?」
「茉莉子が出してくれるもので、不味いものなんてないよ。
水、出されても美味しいから。
綺麗に拭き上げたグラスで出してくれるしな」と言う。
「まあ。
でも時々、お父様みたいに、
がぶ飲みしたいとか、
ガサツに大皿で良いよとか、仰るけどね?」と言って、
父親の方を向いてにっこり笑った。
「茉莉子さん。
こんなにガサツで気が利かない息子と一緒になってくれて、
ありがとう」
と、父親は頭を下げた。
「とんでもありません。
亮太さんほど優しくて、私と息子の拓人、
それに結依ちゃんを大切にしてくださってる方は、
他にもおりません。
私、とても幸せ者だと思っております」
と言った。
「結依か…」
「あの?」
「聞いてるんだろ?結依のこと。
私はね、どうしても陽子さんを受け入れられなかったし、
結依のこともね。
心が狭いんだろうな」と言った。