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100万本の赤い薔薇
第10章 華燭の祭典
「結依ちゃんは、亮太さんと私の娘です。
拓人も、亮太さんと私の息子です。
それだけで良いと思っています」
と、茉莉子はキッパリと目を見て言った。

「だから、これからは…
私のお父様になっていただけませんか?
そして子供達のお祖父様に。
無理にとは申しませんが、
大切なのはこれからだと考えています。
家族としての絆を大切にして行きたいです。
そして、これから産まれる子供のことも、
孫として接していただきたいです。
私も父は亡くなりました。
母は再婚して海外におります。
近くにいて、お祖父様としてそばに居ていただきたいのです」

長谷川の父親の眉が、ピクリと動いた。


「私は、その時に居た訳ではありませんが、
亮太さんと結依ちゃんの話を聞いて、
陽子さんのことは、母親とは思えません。
それを知ってるのに見て見ぬふりをされていたそのご両親様も同じです。
でも…
確かに結依ちゃんのことは受け入れ難いと思いながらも苦しんでいらっしゃった亮太さんのご両親様は、
決して見て見ぬふりをして、結依ちゃんを傷つけていたのではないですし、
上手く事実を消化出来なかっただけだと思います。
これから、改めて、
結依ちゃんのことを、亮太さんと私の娘だと思って接してください。
結依ちゃんは自分の出生についてずっと苦しんで、
母親からもネグレクトを受けながらも、
亮太さんの深い愛情でとても素直で優しいお嬢様に育ちました。
私はその手助けをして行きたいと思ってます。
その為にも、お父様のご協力が必要なのです」


長谷川の父親は、下を向いて膝の上で拳を握り締めていた。
ぽたぽたと涙が落ちている。

長谷川も泣いていた。
自分も、最初は「デキ婚」のことで両親になじられ、
うっかり酔った時に結依の出生の話をしてしまって大喧嘩して以来、
話もせず、説明もしてきていなかった。
父がそのことを母には言わずにいてくれたのは感謝していた。

そして、もっと自分は両親と話をするべきだったと悔やんだ。


「行かせて貰うよ。
頑固爺さんで、子供達にとって楽しい話も出来ないけどな」

「あら。
フランス語を教えてあげてください。
結依ちゃん、フランス人の先生にピアノを習い始めて勉強したいって言ってたから」

そうやって、話のきっかけを作ろうとする茉莉子の心遣いに感謝しながら、
土産の和菓子を一緒に食べた。

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