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100万本の赤い薔薇
第11章 小さな箱
翌日は、茉莉子が行きたいと言っていた寺をいくつか巡った。

美しい枯山水や、緑深い庭など、
いつまでも座って、風の音を聴いていたいほどだった。


「お母様、茶道をされていたと仰っていたから、
何か美味しいお菓子をお父様に持ち帰りたいわ」と、
小さいながらも江戸時代からの老舗だという店舗で土産を選んだり、
葛切りを食べながら一休みしたりした。


こうやってのんびり2人で旅をするのも良いものだと、
長谷川は思った。

これまで、そんな楽しみはなかった。
仕事ばかりの人生だった。
これからは…と思い、茉莉子の手を握った。

茉莉子は優しく微笑み返した。



帰宅すると、
結依と拓人は賑やかに、
「お土産は?」と纏わりついてくる。

そんな何気ないことも、長谷川には嬉しく感じた。


夜、ふと目が醒めると、
隣に眠っている筈の茉莉子が居ない。
暫く起きていたが、戻らない。

貧血でも起こしてはいないかと気になり、
長谷川はベッドから起きて、洗面所やトイレを見てみたが居ない。

少し前まで結依が使っていた茉莉子の「ごちゃごちゃ部屋」と呼んでいる部屋にも居ない。

少し焦って見廻すと、
ベランダに出る大きな窓が少し開いていた。

外を見ると、茉莉子がコールマンの椅子に座っていた。

長谷川はカーディガンを抱えて外に出て、
ふわりと茉莉子の肩にカーディガンを掛けた。



「どうした?眠れないのか?」と言うと、

「ごめんなさい。起こしちゃった?」と小さい声で言った。


「ホットミルクでも作るか?
チンすれば良いんだよな?」と言うので、

「大丈夫よ」と笑った。


「そうだわ。
来月は、病院に一緒に行って貰おうかしら?
検診の後にね、
お風呂の入れ方とかを、
お父さんも習えるんですって」と言った。


「うんうん。一緒に行くよ」と、長谷川はそう言うと、
茉莉子を背中から抱き締めた。


「亮太さん、あのね…
亡くなった元夫から預かってたという箱があるの。
あちらの弁護士さんが、葬儀の後に渡してくださったの。
怖くて開けられないままよ。
でもね、きちんと全て終わらせないと、
ちゃんと前に進めないような気がしてしまって。
思い切って開けてみようかと思ったけど、
1人では怖くて…」


「じゃあ、一緒に開けてみようか?」


茉莉子はコクリと頷いた。
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