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100万本の赤い薔薇
第1章 いつも見てた
横をすり抜けながら階段を駆け降りていくサラリーマンと少しぶつかって我にかえると、
茉莉子の姿はなかった。
首を振りながら、駅の階段を降りて、
地下鉄に乗り込む。

茉莉子に言われた通り、
座ってしまうと寝入ってしまってとんでもない駅まで連れて行かれそうなので、
ドアの処で立っていた。

窓の外は、暗い地下鉄の壁で、
酔っ払った間抜け顔の自分が映っている。


明確に振られたり、拒絶はされてない。
煙草は辞めよう。
いや、取り敢えず減らそう。
そして、明後日はランチデートだ!!
薔薇の花束?
うーん。

そんなことを考えていたら、すぐに駅に着いた。


狭いワンルームマンションの殺風景な部屋に入ると、
携帯を取り出して、ダイヤルする。

コール2回で、柔らかい茉莉子の声がした。

ずっと話をし続けたいような、
優しい、心地良い声だったが、
健太は少しぶっきら棒に、
無事に帰宅したことを伝えて、
おやすみなさいと言って、電話を切った。


なんてことはない。
茉莉子を抱き締めた時の感触や香りが残っているうちに、
自分を慰めたかったからだ。


終わった後、

あー。
なんか情けない。

と呟いて、
天使みたいに優しくて可愛い茉莉子さんをオカズにするなんて、
なんか冒涜してるみたいだと、
少し自己嫌悪に陥った。


それと、バーで着信があった携帯も気になる。
あれって、金曜の夜に茉莉子さんを口説いていたオッサンじゃないのかな?


そして、薔薇の花束なんて、
どうやって準備して、
会社に持ち込んでランチに持っていけるんだろうと考えているうちにいつの間にか眠っていた。


カーテンもない殺風景な部屋に、
茉莉子さんを呼べるわけ、ないよな。
ベッドも狭いしな。

考えることがあり過ぎて、
いつ眠ったかも判らない健太だった。
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