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100万本の赤い薔薇
第11章 小さな箱
茉莉子さん

何から書いて良いのか判りません。
ただ、きちんと書き残しておくべきだと思い、
この手紙を書いています。


最初に、茉莉子さんには心から謝罪の言葉を述べたいと思います。


私の家は、ご存知の通り、江戸時代から続く医者の家系でした。
私は引っ込み思案で口下手ながら、
勉学は出来たので医者にはなれましたが、
女性と付き合うことはほとんどないまま、年月ばかり経ってしまいました。


茉莉子さんのことは、赤ちゃんの頃から知っていました。
最初は父の代に患家の一つだった山川様ご夫婦が、
乳幼児検診をお願いしたいと連れてきたのを覚えています。

私はまだ、大学院生でしたが、
本当に可愛らしかった。

ご両親様も幸せそうでした。


その後、父が亡くなり、
病院を継ぐために大学病院の勤務を辞めることになって、
時々、風邪を引いたとか、インフルエンザに罹ったと言っては通院してくる茉莉子さんの成長を見るのが楽しみでした。


可愛らしい茉莉子さんのことは、
最初からとても気になる存在でした。
高校生になると日に日に女性らしくなり、
内心ドギマギしながら聴診器を当てることもありました。

ただ、年齢差を考えると結婚などは難しいと考えていました。


私にはもう一つ、茉莉子さんに近づけない秘密がありました。
あなたには知られてしまったことですが、
私は姉と何年にも渡って男女の関係だったのです。


小さい頃から気が弱く、大人しい私は、
常に姉の言いなりでした。

最初は、本当に幼い頃に、揶揄われたり悪戯されたことがきっかけだったように思います。
それがいつの日か、口にしてはいけないような関係へと進みました。

姉は、私のことを独占したかったのかもしれません。
父が亡くなった後は、
早くに母も亡くなっていたこともあり、
結婚もせずに家に残って取り仕切ってました。

いつでも、そして、何度も、私のことを貪りました。

断ろうものなら、乱暴なこともされました。
でも、断りきれなかったのは、
自分でもその背徳的な穢れた関係の愛欲にまみれ、溺れていたのかもしれません。
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