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100万本の赤い薔薇
第11章 小さな箱
翌日、茉莉子と長谷川は真珠店に向かった。

仕事で顔を合わせる顔見知りが居たので、
伝票を見せると、
「これは…」と言って、少し意外そうな顔をして、
奥の商談ルームに2人を通した。


そして、暫くすると、
トレイに載せた品を手に他の担当者がやってきた。


「毎年、奥様のお誕生日のお祝いをとご用意されておりました。
昨年もご来店され、
特注のお品をということでご用意させていただきました。
集めた真珠をご確認いただき、刻印などもあるので後日改めてご来店いただくことになっておりましたが、
その後、お電話を差し上げてもご連絡がつかず、如何したものかと…」

「秋に他界致しました」と伝えると、


「それはご愁傷様でございました。
あの、失礼ですが、茉莉子様ですか?」


「はい」


「これまでもイニシャルなどを入れさせていただいておりましたので。
こちらが昨年のプレゼントとしてご注文いただき、特注でご用意させていただきました3点セットのお品でございます」


トレイには、大粒のピンクがかった美しいアコヤ真珠にダイヤモンドと真っ赤なルビーをあしらった指輪とお揃いのピアス、そしてネックレスが載っていた。


「なかなかこのお色とサイズで揃えるのは難しい逸品でございますが、1年前の時から、次回はピンク色のパールでと仰っていて、1年がかりでご用意させていただきました」と説明された。


「…そうでしたか」


「お代は既に頂戴しておりますので」と、
ラッピングを始めながら、

「だいぶお痩せになってらっしゃいましたから…。
急死でらしたのですね。
あ、立ち入ったことを失礼致しました」と言い、
袋に入れて茉莉子に手渡した。

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