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100万本の赤い薔薇
第2章 初めてのデート
同じ週のこんな早い時間にバーに行くのは初めてかもしれない。

健太は、「OPEN」とある重たい扉を押した。

中からギターの音が聴こえる。

ブラックバードだ!


「いらっしゃい」
珍しくマスターの声に迎えられた。


「こんばんは」
とそそくさと言いながら、
健太は茉莉子の隣に座って、頭を下げる。


「ごめんなさい。
昼、慌てちゃって会計もしないで帰ってしまって」


「ふふふ。
嬉しいプレゼントいただいたから良いのよ。
100万本の薔薇貰ったの、初めてで感激しちゃったわ」


「でも!」


手元を見ると、
茉莉子は五線紙に譜面を書きながらギターを弾いてるようだった。
片方の耳にはイヤホンが刺さっていて、
薄い耳朶には大粒のグレーがかった真珠のピアスが光っていた。


「あの…俺、譜面読めないっす」


「あら、そう。
でも良いの。
自分用にメモしておくわ」

と言いながら、サラサラと音符を書いていく。


「あ!昼メシの分、奢らせてください!」
と健太が言うと、


「今日は私、飲めないから、
代わりにマスターにご馳走して。
ギター借りてるしね」

と、茉莉子さんは子供みたいな顔で笑いながら言った。


それ、なんか違うような気がするけどなと思いながら、
取り敢えずギネスを2杯頼んで、
マスターと乾杯した。


茉莉子は譜面を仕上げたのか、
ギターを健太に渡して、

「ちょっと弾いてみる?」
と言った。


高校時代にちょこっと弾いたことあるけど、
フォークギターで簡単なコードしか知らないと言う健太に、

「いきなりブラックバードは難しいかな?
ブルースコード、覚えようか?」
と茉莉子が言うと、
マスターはいきなり喜んだ顔で会話に乱入してくる。



「おっ!茉莉子ちゃんは、ブルースもいけるのか」
と、健太のギターを奪う勢いだ。


健太からギターを奪ったマスターは、
早速ブルースコードを奏でながら、
適当な歌詞をのせて歌い出す。


茉莉子は、五線紙を裏返して、
線を6本引き、
3つのコードの押さえ方を書いて健太に渡す。
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