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100万本の赤い薔薇
第2章 初めてのデート
揺らぐキャンドルの焔とゆっくり溶ける氷を見ながら、
茉莉子はぼんやりした気持ちで思いを巡らせた。


健太には、揶揄うようなことをしてしまって
申し訳なかったかもしれないし、
どうしてあんなに茉莉子としては大胆なことをしたのかとも思った。

健太の若さに引っ張られて、若くて怖いもの知らずだった頃の自分のような振る舞いをしてしまった。

耳にキスするなんて!
と、赤面した。

でも、不思議と健太に対しては男性に対する怖さや嫌悪感はないことを再確認した。



いつもだったら、息子の報告!と一番に連絡して相談する真人からの電話はない。
流石にこちらからも掛けれないけど、
聞いたら自分のことのように喜んでくれたり、
あれこれ考えてくれるだろうと、アメリカに思いを馳せた。



そして…

長谷川だ。
電話をして、どこから電話番号を入手したかを聞かなければ。
それだけの確認はしようと思った。

長谷川に対しては、
少し面倒な予感と、如何にも男性的な態度から少し怖さを覚える。
憧れていた先輩とは久し振りに会いたいと思ったが、
それも実はどうでも良いような気持ちもしてきた。


長谷川の妻の旧姓・神崎陽子は、放送部の2年先輩だった。
大学進学後にFM局でパーソナリティーを務めながら、華やかな女子大生生活を送っているのを遠くから見ていた。
卒業後もパーソナリティーを続けていたが、
茉莉子が大学4年の時に急に呼び出され、
結婚するから披露宴の司会をして欲しいと頼まれ、
その時にパーソナリティーも辞めて専業主婦になると告げられ、
とても驚いたのを今でも覚えている。


披露宴は司会で殆ど話も出来なかったが、
二次会では同窓生も多く、
久々に会う顔もたくさん居て、楽しく過ごせた。

ただ、その直後に、
茉莉子の運命を変える出来事に見舞われ、
その結果、茉莉子はそれまでの友人知人との交友も断つこととなったので、陽子と長谷川のこともすっかり遠くなっていた。



少し酔いが回っているような気がしたが、
苦手な男性に電話をするならこれ位がちょうど良いと思い、
携帯を取り出し、
最後の着信が長谷川であることを確認しつつ
リダイヤルした。


着信履歴には、ズラリと長谷川の番号が並んでいるのを見て、
クスリと笑った。
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