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100万本の赤い薔薇
第1章 いつも見てた
「あらあら。すっかり酔っぱらっちゃいましたね。タクシー呼びますね」
ママがようやく助け舟を出してくれて、
茉莉子はホッとする。
携帯電話の番号も交換することなく、
すっかり寝落ちてしまっている。
ほどなくタクシーがきた。
奥に座っていた男性客が肩を貸して、
長谷川をタクシーに乗せる。
その時、長谷川はかろうじて目を開けて、
「ママ、これで会計を」と万札を掴んで渡そうとする。
「あらあら、それじゃ多いわよ」とお札を返そうとすると、
「じゃあ、次にジャスミンと飲む時までそれ預かってて。
ジャスミン、連絡頂戴ね」
と言って、名刺を茉莉子に渡して、
そのままタクシーで走り去った。
「まあまあ、慌ただしいヒトね。健太くん、ありがとね」
首を振りながら、ママはお店に戻ってしまい、
茉莉子は健太くんと呼ばれた若者にそっと小さい声で、
ありがとうございましたと声を掛けた。
健太の返事を待たずに茉莉子もお店に入ると、
「ママ、さっきの長谷川さんて、よくいらっしゃるの?」
と尋ねた。
「いいえ。今日初めていらしたのよ。
ご一緒に居た阿部さんはね、ほら、近くの会社の方で良くいらっしゃるんだけど、
茉莉子さんは面識なかったかしら?
その阿部さんと大学の同級生だとかなんとか、言ってたかな」
「そうですか。どうしよう?名刺をいただいたけど、きっとあんなに酔ってたから覚えてないですよね、連絡とかって言っても」
「ま、茉莉子さんが逢いたかったら電話すれば良いんじゃない?」
そう言われても。
と思いながらも、遅い時間になったので、帰ることにして、
バッグからお財布を取り出すと、
「良いわよ。たくさん頂いちゃったから。
次回の飲み代までね」と言いながら、
ママは悪戯っぽい笑いを浮かべた。
茉莉子もつられて笑いながら、
健太に会釈をして、
「おやすみなさい」
と言って、バーを後にした。
それが、
茉莉子と長谷川の再会の夜でもあり、
茉莉子と健太の意識した上での最初の出会いの夜でもあった。
ママがようやく助け舟を出してくれて、
茉莉子はホッとする。
携帯電話の番号も交換することなく、
すっかり寝落ちてしまっている。
ほどなくタクシーがきた。
奥に座っていた男性客が肩を貸して、
長谷川をタクシーに乗せる。
その時、長谷川はかろうじて目を開けて、
「ママ、これで会計を」と万札を掴んで渡そうとする。
「あらあら、それじゃ多いわよ」とお札を返そうとすると、
「じゃあ、次にジャスミンと飲む時までそれ預かってて。
ジャスミン、連絡頂戴ね」
と言って、名刺を茉莉子に渡して、
そのままタクシーで走り去った。
「まあまあ、慌ただしいヒトね。健太くん、ありがとね」
首を振りながら、ママはお店に戻ってしまい、
茉莉子は健太くんと呼ばれた若者にそっと小さい声で、
ありがとうございましたと声を掛けた。
健太の返事を待たずに茉莉子もお店に入ると、
「ママ、さっきの長谷川さんて、よくいらっしゃるの?」
と尋ねた。
「いいえ。今日初めていらしたのよ。
ご一緒に居た阿部さんはね、ほら、近くの会社の方で良くいらっしゃるんだけど、
茉莉子さんは面識なかったかしら?
その阿部さんと大学の同級生だとかなんとか、言ってたかな」
「そうですか。どうしよう?名刺をいただいたけど、きっとあんなに酔ってたから覚えてないですよね、連絡とかって言っても」
「ま、茉莉子さんが逢いたかったら電話すれば良いんじゃない?」
そう言われても。
と思いながらも、遅い時間になったので、帰ることにして、
バッグからお財布を取り出すと、
「良いわよ。たくさん頂いちゃったから。
次回の飲み代までね」と言いながら、
ママは悪戯っぽい笑いを浮かべた。
茉莉子もつられて笑いながら、
健太に会釈をして、
「おやすみなさい」
と言って、バーを後にした。
それが、
茉莉子と長谷川の再会の夜でもあり、
茉莉子と健太の意識した上での最初の出会いの夜でもあった。