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100万本の赤い薔薇
第2章 初めてのデート
「しかし、凄い部屋だな」
と長谷川がコーヒーを飲みながら言う。


「凄い?」


「色々な意味で凄いよ」


「何もないから?」


「シンプル過ぎるかな?
観葉植物無かったら、
本当に必要最低限って感じだな。
テレビもないのか。
女性らしいもの、何もないな。
でも、それより、
独りにしては凄い広さだ。
リビングにグランドピアノ置いてある時点で
卒倒しそうになるよ。
家賃、いくらなんだよ」
と笑いながら言う。


「でも、ご飯食べる為のテーブルはあるし、
ソファもサイドテーブルもあるし、
ベッドもあるわ」


「どんなベッドか気になるな」
とニヤリと笑うと、


「あら。
モカちゃんに噛み付かれるわよ」
と言い返されて苦笑することになる。


「世間一般的に、
女性ってあれやこれや飾ったり詰め込んだりしない?」


「モノがたくさんあると、
息が詰まっちゃう」


「ふーん。そういうものなのか」


コーヒーテーブルにカップを置くと、
長谷川は茉莉子の手を引いて自分の隣に座らせた。

肩を抱いて髪に触りながら、
「まだ、少し濡れてるな」と、
髪に指を絡ませた。


「あっ」
と言いながら茉莉子は笑う。


「なんか可笑しいと思ったら、
ずっとバスタオルを肩に掛けてたのね。
すごく間抜けだったわね」
と、バスタオルを洗面台に持って行き、
バスケットに入れる。


「歯磨きしたい」
と、後ろから長谷川が言うから、

「どうぞ」と笑いながらストックしている歯ブラシを渡す。


2つ並んだ洗面台で歯ブラシを動かしながら、

何、この変なシチュエーション?

と思ったら、吹き出しそうになる茉莉子だった。


先にリビングに戻り、
コーヒーカップをキッチンのシンクに置きながら、

「そろそろ出掛ける時間なの。
モカちゃんのお散歩の時間…」
と茉莉子が言うが、


「駄目だよ。
歯磨きしたから、キスする時間」
と、長谷川は茉莉子を抱き上げてソファにそっと降ろすと、
抱き締めてキスをした。


柔らかい唇
ミントの香り

少し強引に唇をこじ開けて、
舌を入れて茉莉子の舌を弄ろうとするが、
反応しようとしない。
更に大きな手のひらで背中を撫でていると、
何か違和感を覚えた。


長谷川は目を開けてみると、
茉莉子は涙を流していた。
顔色も紙のように白く、
身体も震えていた。


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