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100万本の赤い薔薇
第3章 怖くて堪らない
「あり合わせだと言っていた朝食も美味かったが、
夕食は更に美味い!」

と、長谷川は心の底からそう思って、
言葉に出して料理も盛り付けもテーブルセッティングも褒めた。

「なんか、恥ずかしいわ」
と頬を染めるのが、キャンドル越しにも判る。

ゆっくりワインを飲みながら、
手料理を堪能した。

外食ばかりだという長谷川は、
本当に美味しそうに食べるので、
茉莉子も嬉しかった。


赤ワインは、国産のビオワインだということだったが、
茉莉子は嫌な思い出が蘇るような気がして、
殆ど飲めなかった。


「赤ワイン、苦手だったのか?
白とかもあるぞ。
取ってこようか?」
と言う長谷川に、

「私の分も召し上がってくださいな。
昨日散々飲んだので、
今日はあんまり身体がアルコールを受け付けないみたいで…
アイスティー、作ってきますね。
長谷川さんはもう少しワインですよね?」
と言ってキッチンに立った。


ガシガシと音がしてるなと思っていたら、

「あっ!!」という声がするので、
慌ててキッチンを覗くと、
氷をピックで割っていたらしい茉莉子の手から血が流れていた、


「大丈夫か?
そんなの、俺がやったのに!
救急箱ある?」

長谷川は慌てて尋ねる。


ペーパータオルで止血しながら、

「寝室にあります」
と言うので、ふたりで寝室に入る。


クローゼットの中にあるチェストの引き出しを片手で開けようとする茉莉子を手伝いながら、
救急箱を取り出す。

茉莉子をベッドに座らせて、
消毒をすると、
傷に沁みるのか、唇を噛み締めて涙ぐんでいる。

化膿止めと書いてある薬を塗り、
大きめの絆創膏を貼った。


「まだ痛むか?
食器片付けておくから、
少し休んでると良いよ。
食洗機に入れとけば良いんだよな?」

と言って、頭をポンポンと軽く叩くと、

「そそっかしいところもあるんだな」
と言いながらキッチンに戻って行った。


確かに鼓動に合わせてズキズキと傷は痛むので、
茉莉子は横になった。


長谷川は取り敢えず、食器を食洗機に入れて、
ワイングラスだけはまだ残しておいた。

紅茶を淹れようかと思ったが、
あまりあちこち開けるのもなと考え直して、
リーデルのグラスに綺麗な氷を入れて、
冷蔵庫に入っていたペットボトルの水と一緒に寝室に運んだ。



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