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100万本の赤い薔薇
第3章 怖くて堪らない
「まだ、痛むかな。
水、飲む?紅茶は何処にあるか判らなかったから」

と長谷川は心配そうに言った。


「片付けまでさせてしまってごめんなさい」
茉莉子は起き上がろうとした。


「手を貸そうか?」


茉莉子がゆるゆると身体を起こして、そのままベッドに座ったので、
コップを渡して、ミネラルウォーターの蓋を開けて注いだ。


「もう寝るなら帰るよ。
起きれそうなら、
リビングでもうちょっと一緒に居たいな。
いや、ここでも良いんだけど、
絶対、茉莉子に襲いかかるに違いないから。
手が痛い時に、
そんなの最悪だろ?」と笑いながら言った。


「私ももう少し一緒に居たいな」
と茉莉子が口にした時は、
心の中で大きくガッツポーズを決めていた。


「じゃあ、リビングに行こうか」
と長谷川は言って、痛めていない右手を握り締めた。


リビングのソファに並んで座る。
肩に手を回して、
もう片方の手で手を握る。



「こんな週末を過ごせるなんて、
なかなかないな。
疲れ切ってダラダラしてるか、
付き合いでやりたくもないゴルフに行くかくらいだからな。
前は独りで山登りにも行ったけど、
最近は行ってないからすっかり足腰も弱ってるな」

と笑う。

「茉莉子はいつも、
週末は何をしてるの?」


「早く週末が終わらないかな?って思いながら、
お料理するか、刺繍するくらいです」


「刺繍?」


「集中出来るし時間もかかるから、
暇つぶしにもってこいなんです。
だって、夜はあんまり眠れなくて。
平日は仕事でクタクタになってて、
帰りにお酒飲んでから帰宅するので、
結構眠れるんですけど、
週末は本当に眠るの苦労するんです」


「眠れないなら、
ずっと話が出来るな。
大丈夫だよ。
キスしたり押し倒したりしないから。
だってほら、歯磨きしてないからね」
と、揶揄うように言う。


「本当に私、
そんなこと言いました?」
と、茉莉子が少しだけ頬を膨らませて言った。

そんな顔もするのか。
もっと色々な表情を見たい。

長谷川はそう感じた。




「そうだ。
陽子の話をしようか?
あんまり良い話でもないけどな」
と長谷川は静かに語り始めた。
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