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100万本の赤い薔薇
第3章 怖くて堪らない
「こんな話、面白くもなんともないな。
この辺で止めるか」
茉莉子は首を振るので、
淡々と続ける。
訳がわからないまま立ち尽くしてたら、2人が出てくるところに鉢合わせした。
男は、「仕事が」とか言って逃げたよ。
陽子と2人、無言で帰宅してから、
ダイニングテーブルに向かい合って、
久し振りに話をしたよ。
「あなたが浮気したから、
私だって浮気したって、おあいこよ」
って言われた時には、
もう心が醒めてた。
「産婦人科ってどういうことだよ」
「決まってるじゃない。
妊娠したのよ。
でも産める訳ないでしょ。
ダブル不倫なんて」
「あいつとはいつからなんだ」
と訊いたら、
陽子は黙り込んでしまった。
長いんだろうと思った。
「それでどうする?」と、
溜息をつきながら訊くと、
「離婚はしたくない。
子供が独り立ちするまではこのままでいたい」と言われた。
正直もう顔も見たくないし話もしたくないと思い、
俺は家を出ることにした。
次に荷物を取りに行った時には、
判子をついた離婚届の書類を置いていった。
だから、陽子の話を訊かれても、
正直どうしているかも判らないんだ。
「あの…赤ちゃんは?」
と、涙ぐみながら心配そうに茉莉子が訊く。
「産まれなかったから、
堕したんだろう。
特には訊いてない」
多分、冷たく聞こえたのかもしれない。
茉莉子が息を呑んで、
余計に身を震わせるのを感じた。
長谷川は、
茉莉子をしっかりと抱き締めて背中を優しく撫ぜる。
「お嬢様とも会ってないの?」
長谷川は、ピクリと身じろぎした。
これは口にしても良いのだろうか?
「かなりキツイ話なんだ。
誰にも話したことはないんだ」
そういうと、長谷川は声のトーンをわざと明るくして、
「歯磨きでもしようか」
と言う。
コクリと茉莉子は頷くと、そっと立ち上がる。
テーブルに置きっぱなしのグラスを手にキッチンに行こうとするので
「俺が洗うよ。
残ったワインは中途半端だな。
料理とかに使えないかな?」
と言うので、
茉莉子は取り敢えずラップで蓋をしてみて、
冷蔵庫に入れた。
そして、洗面台の前でふたり並んで、
歯を磨いた。
「シャワーも今日はやめた方がいいな」
と手に貼った大きな絆創膏のあたりを見ながら言った。
この辺で止めるか」
茉莉子は首を振るので、
淡々と続ける。
訳がわからないまま立ち尽くしてたら、2人が出てくるところに鉢合わせした。
男は、「仕事が」とか言って逃げたよ。
陽子と2人、無言で帰宅してから、
ダイニングテーブルに向かい合って、
久し振りに話をしたよ。
「あなたが浮気したから、
私だって浮気したって、おあいこよ」
って言われた時には、
もう心が醒めてた。
「産婦人科ってどういうことだよ」
「決まってるじゃない。
妊娠したのよ。
でも産める訳ないでしょ。
ダブル不倫なんて」
「あいつとはいつからなんだ」
と訊いたら、
陽子は黙り込んでしまった。
長いんだろうと思った。
「それでどうする?」と、
溜息をつきながら訊くと、
「離婚はしたくない。
子供が独り立ちするまではこのままでいたい」と言われた。
正直もう顔も見たくないし話もしたくないと思い、
俺は家を出ることにした。
次に荷物を取りに行った時には、
判子をついた離婚届の書類を置いていった。
だから、陽子の話を訊かれても、
正直どうしているかも判らないんだ。
「あの…赤ちゃんは?」
と、涙ぐみながら心配そうに茉莉子が訊く。
「産まれなかったから、
堕したんだろう。
特には訊いてない」
多分、冷たく聞こえたのかもしれない。
茉莉子が息を呑んで、
余計に身を震わせるのを感じた。
長谷川は、
茉莉子をしっかりと抱き締めて背中を優しく撫ぜる。
「お嬢様とも会ってないの?」
長谷川は、ピクリと身じろぎした。
これは口にしても良いのだろうか?
「かなりキツイ話なんだ。
誰にも話したことはないんだ」
そういうと、長谷川は声のトーンをわざと明るくして、
「歯磨きでもしようか」
と言う。
コクリと茉莉子は頷くと、そっと立ち上がる。
テーブルに置きっぱなしのグラスを手にキッチンに行こうとするので
「俺が洗うよ。
残ったワインは中途半端だな。
料理とかに使えないかな?」
と言うので、
茉莉子は取り敢えずラップで蓋をしてみて、
冷蔵庫に入れた。
そして、洗面台の前でふたり並んで、
歯を磨いた。
「シャワーも今日はやめた方がいいな」
と手に貼った大きな絆創膏のあたりを見ながら言った。