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100万本の赤い薔薇
第3章 怖くて堪らない
その後は、正直、
娘にどうやって接すれば良いか判らなくなった。

病院に見舞いには行ったが、
眠っている娘の顔を見ていると、
涙が出てしまうので、
花やオモチャやお菓子を置いて帰る日が続いた。
退院後も、顔を見て普通に接する事も出来そうにないから学校行事に行っても早々に帰るようになった。

仕事に没頭するようにしたが、
部屋に帰るとどうしても考えてしまう。
酒にも溺れた。
休日が辛すぎて、
一時期は狂ったように休み毎に独りで山に登った。

山で死ぬかもしれないと思ったことも何度かあった。
別に死んでも良いという気持ちだったのかもしれない。

陽子のことはどうでも良かった。

でも娘のことは、
産まれた時からずっと大切に想っていたのに、
血が繋がってなかったことを、
自分の中で上手く整理出来なかった。

そんな器の小さい自分にも、
呆れてしまって…


話しながら長谷川は涙が流れていることに気づいたが、
横を見ると自分以上に茉莉子が涙を流しているので、
茉莉子を引き寄せて抱き締めた。


茉莉子の涙は、
自分の為なのか、
俺の娘の為なのか、
茉莉子自身のことを思ってなのかは判らないけど、
更に茉莉子に気持ちを伝えようと思った長谷川は、言葉を続けた。


バーで再会した時に言ったことは本当だよ。
披露宴の時に、
なんて清楚で可愛い子だろうと思った。
元々、派手で自分が自分がっていう女は苦手だったしな。
子供が出来たと言われなかったら、
陽子とは結婚もしなかったと今でも思う。
でも産まれる命に対する責任感は強かった。

だから、人生をもしもやり直せるなら、
いや、違うな。
これからの人生を共に過ごせるなら、
茉莉子みたいな心が優しくて控えめで、
でも芯が強そうな女と一緒になりたいと思った。

もちろん、まだ、
茉莉子のことは何にも知らないし、
茉莉子も俺のことを知らない。

戸籍上は、まだ籍も抜けてないから、
そんなことを言う資格はないかもしれないけど、
茉莉子を守って、いつも笑って過ごしてもらえるようにありたいと思ってるんだ。

だから、すぐに決めなくていい。
ゆっくり、長く親しくなりたいし、
茉莉子が嫌なことはしないように努力するから、
俺と付き合って欲しいんだ。

ただ、今後もしも茉莉子が子供を欲しいと思うなら、
それだけは無理だってことは言っておこうと思う。
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