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100万本の赤い薔薇
第3章 怖くて堪らない
離婚の話し合いは、
両家弁護士立ち合いでとなったの。

息子については、
こちらで育てさせてくれと、
気位が高い先生が土下座したわ。

絶対に大切に育てる。
息子がやりたいことがあったら尊重する。
医師ではない道を選んだとしても認める。
本人が知りたいと言うまで離婚の原因は言わない。
定期的に息子の様子を知らせると共に、
私とは判らない状況で息子に会わせるか、遠くから見せる機会を作る。
そして、息子が私の存在に気づいて会いたいと言った時には、
必ず会わせる。

そういったことについて細かく契約書を結んだの。


そして、まだ幼かった息子を護るということを一番に考えて、
ひとまず私は死んだということになった。

離婚となると、
後からその原因はということが蒸し返されて、
適切でない時期に息子の耳に入ることを避ける為よ。


そして、私は一度全てをリセットしようと思って、
フランスに渡ったの。

そこで、フランス語と刺繍の勉強をして、
3年後に帰国してから、
父の親友の会社に入ったのが、今の会社よ。


勿論、息子は自分で引き取って育てたいと思ったわ。
でも、大学卒業はしたけど、
内定出ていた会社も自己都合でお断りして、
そのまま引き篭もるように出産して子育てしていただけのその時の私では、充分良い環境を与えられないと思ったの。
少なくとも、開業医で、
地位も名誉も資産もある父親の方が、
客観的に見て、まずは良い環境を与えられると。

でも、絶対にいつか、
息子と暮らせる日が来るよう、
努力はしようと思ったし、
何よりも、いつか、
息子が真実を知りたいと思った時に、
冷静にそれを伝える役割をすることになるから
強くなりたいとも思ったの。

だって大きくなったら戸籍謄本見るとかで、
状況も判るじゃない?

契約では、息子が私の存在に気づいて会いたいと思ったら会わせることになっていたけど、
やはりあちらはガードしてきたの。
でも当時のお手伝いさんが今も同居していて、
息子に詰め寄られて私が生きていることや離婚は止むを得なかったことをやんわり伝えてくれて、
今週になって初めて、息子からの手紙が届いたの。


会いたいって書いてあった。
本当に嬉しい反面、
なんて言えば…
どこまで言えば良いかを考えているの。
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