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100万本の赤い薔薇
第1章 いつも見てた
「何?その喪服みたいな服は」


「ダイアンのラップワンピースは喪服じゃないよ。
働く女子の戦闘服だよ。
こんな胸の谷間が見える喪服なんてないでしょ」


「女子ってさ、何歳まで使えるわけ?」


「もう、うるさいな。一応誕生会なんだから、もっと優しくしてよね」


テンポ良い会話を楽しみながら、
美味しいお寿司に舌鼓を打った。


真人は元々、背も高く、
年齢を重ねるに連れて若干恰幅もよくなっていて、
ゴルフのせいか日焼けしている。

顔立ちも彫りが深いので、
後輩から、なんだか、ロシア人みたいですねと言われていたのを思い出して、
日本酒を呑んでほろ酔いだったこともあり、
茉莉子はコロコロと鈴のような声で笑ってしまう。


最後に、お誕生日だからと、
ホール係の着物の女性が、
特別な和スイーツをサーブしてくれたのは、
真人がわざわざ手回ししたからだったのに違いない。


「とても嬉しいな。
まこちゃん、ありがと」


「まこちゃんは、やめろ」


お店を出て、銀座の雑踏を歩きながら、

「花より団子ってことね。私」
と、茉莉子が呟く。


「えっ? 花が良かったの?」
と、真人が少し驚きながら口にする。


「うん。 真っ赤な薔薇を100万本欲しいな」


「でも、薔薇じゃあ、お腹一杯にならないよ?」


「そんなことだから、まこちゃんは2回もバツがつくんだよ。
女子はね、お花貰うの、大好きなもんなのよ」


「ふーん。 じゃあ、心の片隅にメモしとくよ。
姫様、もう少し飲みますか?
それともお送りしましょうか?」


「ちょっと飲み過ぎちゃったから、お家に帰りたい!」


「御意。 あ!ちょっと待ってて! ここに居てね」


真人は急に走り出した。
茉莉子は雑踏に取り残されて、少し不安になる。


ほどなく、真人が戻ってきて、
深紅の薔薇を1輪、跪いて渡す。



「ちょっと、やだ。 恥ずかしいじゃない」


「だって、団子より薔薇なんでしょ」


「もう!」


2人でケラケラ笑いながら、茉莉子の家に向かった。
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