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100万本の赤い薔薇
第4章 新たな関係と思惑
「今日はお母さんに話があって来たんだ。
でも、その前にお前に言っておこうと思う。
お父さんはお母さんと離婚するよ。
もうかなり前に離婚届は書いて渡していたが、
このまま、現実を見て見ぬふりをして過ごすことは良くないと思ったからだ。
でも、結依が娘であることは一生変わらない。
だから、すぐでなくてもいいから、
考えて欲しい。
お母さんと住むのか、
お父さんと住むのかってことを」

結衣は息を呑んだ。

「お父さんと住んでも良いの?
私、お父さんの子供じゃないんだよ?」

「結依は、俺のたった一人の大切な娘だよ。
俺と暮らすと、家事も出来ないし、
留守も多いから、
寂しい思いをさせるけど、
金銭的な苦労はさせないつもりだ。
学校が遠くなるから、その点を考えないといけないがな」
と言った。

「あのね、
お父さんが嫌じゃなければ、
お父さんと一緒が良い」

そう言って、結依は泣き笑いした。


「判った。
じゃあ、その方向でお母さんとは話をするよ」

そこまで話したら、
結衣は少し安心したのか笑って、

「そうだ!
お父さん、土曜日に弾く予定の曲、
聴いてみる?」
と言って、ピアノ室に連れていかれた。

アップライトピアノが置いてある防音の部屋は、
たくさんピアノを弾きたいという結依の為に、
リフォームして作った。

毎日、この部屋に籠ってピアノを弾いているが、
ピアノを弾くだけでなく、
泣いていることも多かった。

子供心に、母親にちらつく男の影も知っていたし、
それ故、父親である長谷川に対して、
大好きと言う気持ちと母親のしていることからの申し訳なさ、
そして母親に対する嫌悪感が募っていた。

しかし学校でも良い子と言われ続けていた結依は、
そんなことを口にすることも出来ず、
独りで悩み、その気持ちを紛らわせる為にピアノに没頭していたのだった。


陽子はといえば、
長谷川が家に帰らなくなったのを良いことに、
自分の母親に娘を預けて、
公然と男と会うようになり、
外見も派手な容姿になっていっていた。
家事も母親任せで、
母親がそれに対して苦言を呈するようになると、
煙たがって邪険にするようになり、
やがては娘にお金を渡して、
自分は遊び回るようになっていた。


確かにこのままでは、
娘にとっても良くないと考え、
今日、ここに来たことは潮時だったと長谷川は実感してた。
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