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100万本の赤い薔薇
第4章 新たな関係と思惑
同じ夜のこと。
平日はゆるゆると穏やかに過ぎて行って、
金曜日になっていた。
茉莉子が会食で遅くなるという日で、
1人ピアノを弾きに茉莉子の部屋に行った結依は、
洗面所の向かいにあるドアを何気なく開いた。
ベッドやデスクが置いてあるが、
生活感がない部屋だった。
デスクに近づくと、いくつかフォトフレームが置いてある。
手に取ると、今とあまり変わらない茉莉子が、
可愛い赤ちゃんを抱いている写真と、
少し大きくなった子供と楽しそうに笑い合う写真。
他にもいくつか乳幼児の写真があった。
そして、グランドピアノに向かう少年の写真があったが、
その写真はかなり遠くから撮ったもののようで、
顔立ちは判らなかった。
これって?
写真を戻すと慌てて結依は部屋を出た。
胸がドキドキしてしまった。
集中しなくちゃ!と思い直し、
ピアノに向かって夢中で弾いた。
茉莉子が帰ってくると、
「あら。ご飯まだだったのね」と言いながら、
ビーフシチューを温めて、パンを焼いてくれた。
結依は教えて貰ったとおりにエスプレッソを茉莉子の為に淹れると、テーブルに運んだ。
茉莉子と2人で食卓を囲みながら、
あのお部屋に入ったことを謝ろうかと、結依は考えていた。
「いよいよ、明日ね」
と茉莉子が言う。
「上手に弾こうとか思わないで、
いつもここで弾いてるように弾けば良いのよ」と優しく続ける。
結依は頷きながら、シチューを食べた。
「明日は何を着るの?」
「えっと、学校の制服です」
「そうだわ!」
と茉莉子が寝室に入ると、
ペールブルーのハンカチをそっと渡した。
飾り文字でイニシャルが美しく刺繍されていた。
「制服のポケットに入れておいてね。
緊張して汗をかいたら、
これで手の平を拭くといいわ」
ハンカチからは、ほんのりいつもの茉莉子の柔らかい優しい香りがした。
「大切にします!」と言うので、
「こんなもの、いくらでも縫えるから」と茉莉子は優しく言った。
「お父様、今夜も遅いのかしら?
携帯メールがよく判らないから電話してみる?」と、
子供みたいな顔をして言う。
「私も携帯電話、よく判らないから。
そのうち帰ってきますよ」と呑気な顔をした。
「そうだ。
私、結依ちゃんにお願いしたいことがあるの」
茉莉子は少し真剣な顔をしてそんなことを言い始めた。
平日はゆるゆると穏やかに過ぎて行って、
金曜日になっていた。
茉莉子が会食で遅くなるという日で、
1人ピアノを弾きに茉莉子の部屋に行った結依は、
洗面所の向かいにあるドアを何気なく開いた。
ベッドやデスクが置いてあるが、
生活感がない部屋だった。
デスクに近づくと、いくつかフォトフレームが置いてある。
手に取ると、今とあまり変わらない茉莉子が、
可愛い赤ちゃんを抱いている写真と、
少し大きくなった子供と楽しそうに笑い合う写真。
他にもいくつか乳幼児の写真があった。
そして、グランドピアノに向かう少年の写真があったが、
その写真はかなり遠くから撮ったもののようで、
顔立ちは判らなかった。
これって?
写真を戻すと慌てて結依は部屋を出た。
胸がドキドキしてしまった。
集中しなくちゃ!と思い直し、
ピアノに向かって夢中で弾いた。
茉莉子が帰ってくると、
「あら。ご飯まだだったのね」と言いながら、
ビーフシチューを温めて、パンを焼いてくれた。
結依は教えて貰ったとおりにエスプレッソを茉莉子の為に淹れると、テーブルに運んだ。
茉莉子と2人で食卓を囲みながら、
あのお部屋に入ったことを謝ろうかと、結依は考えていた。
「いよいよ、明日ね」
と茉莉子が言う。
「上手に弾こうとか思わないで、
いつもここで弾いてるように弾けば良いのよ」と優しく続ける。
結依は頷きながら、シチューを食べた。
「明日は何を着るの?」
「えっと、学校の制服です」
「そうだわ!」
と茉莉子が寝室に入ると、
ペールブルーのハンカチをそっと渡した。
飾り文字でイニシャルが美しく刺繍されていた。
「制服のポケットに入れておいてね。
緊張して汗をかいたら、
これで手の平を拭くといいわ」
ハンカチからは、ほんのりいつもの茉莉子の柔らかい優しい香りがした。
「大切にします!」と言うので、
「こんなもの、いくらでも縫えるから」と茉莉子は優しく言った。
「お父様、今夜も遅いのかしら?
携帯メールがよく判らないから電話してみる?」と、
子供みたいな顔をして言う。
「私も携帯電話、よく判らないから。
そのうち帰ってきますよ」と呑気な顔をした。
「そうだ。
私、結依ちゃんにお願いしたいことがあるの」
茉莉子は少し真剣な顔をしてそんなことを言い始めた。