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第1章 序章 -アルバート-

アルバートは、すぐさま十字を切り、神に祈った。

この哀れな妹は、魔物に殺されたため、教会で葬式すら挙げてもらえないのだ。

この世界には、魔物と呼ばれる、人では無いものが存在する。
吸血鬼、狼人間、魔女といった類いの生き物がそれで、悪魔の使いとされていた。

教会と相対する彼らに殺された人間は、悪魔に魂を掠め取られたと考えられ、教会から一切の関わりを拒否されてしまう。

許せない…。

妹を殺した吸血鬼を絶対に許さない。


アルバートは、葬式すらしてもらえない妹の為に、一生を掛けてでも復讐することを誓った。



そして、それから、3年の月日が経った。

アルバートは、1日たりともマリアの事を忘れたことは無かった。

アルバートは、聡明で誰にでも親切で、まるで太陽の様な明るさを持った青年だった。
どんな時にも、彼の周りには彼を慕う多くの友人がいた。


だが、マリアが死んでから、彼は笑顔を失くし、他人を寄せ付けない、冷酷で無慈悲な男に変わってしまった。


アルバートは、マリアを殺した吸血鬼どもに復讐をする。
吸血鬼を１人残らず滅ぼす。
その為に、人生の全てを捧げようと思った。


長年争ってきた魔物に対抗する知識や技術を、教会はずっと蓄積し続けていた。
アルバートは教会に協力を仰ぐと共に、様々な書物、吸血鬼の被害者たちの証言等も集め、少しずつ、だが確実に、復讐の準備を積み重ねて来た。


近頃は、その執念が実を結び、マリアを殺した吸血鬼が誰なのかを見つけることが出来た。
そして、その吸血鬼に娘がいることまで分かった。