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第3章 始まり

サラ達は、すぐに平静をとりもどすことが出来た。

「これはいったい？どうしたんですか？」

サラが静かに、しかし困惑した表情を浮かべながら(これは演技だけれど)、タイズに質問した。
しかし、タイズの口が動く前に、目の前の兵士達の囲みが割れ、1人の男がサラ達の前に歩いてきた。




真っ黒な服に身を包み、ブルネットの髪に鋭く光る黒い瞳。
復讐の炎に燃える、アルバートだった。



「アルバート様。これは一体、どういうことでしょう？」

先程と同様、平静を装い、サラは領主であるアルバートに丁寧なお辞儀をする。



「どういうこと？どういうことかは、お前達が一番分かっていることだろう？」

アルバートが右手を頭上に上げて合図をした瞬間、周りにいた兵士達が一斉に襲い掛かってきた。



「あっ！！」
一瞬の出来事に、サラ達は、逃げることも闘うことも出来なかった。





「んぐっっ…」




鋭い痛みと共に、サラは自分の腹に剣が差し込まれるのが見えた。


兵士達は、躊躇無く、一行の一番前にいたサラに剣を振り抜き、その身体を貫いた。




どうして！
なんで？いつ？
私達が吸血鬼だとバレるはずなんて…。



「な、なぜ…」



膝から力が抜けていく。

サラの腹を貫いた剣は、どうやら銀製の剣だったらしい。
もし鉄製なら、傷付きはしても不死身の吸血鬼は死ぬことも無いし、身体を動かすことも出来る。

身体に力が入らないのは、銀製のものが身体の内部にある証拠だった。


サラは崩れる様にその場に倒れた。



そして、ほぼ同時に、ロイスも剣で腹を刺され、トーマスは槍で脇腹から串刺しにされ、マルセルは少し抵抗を見せ、向かってくる兵士の頬を思いきり拳で殴ったものの、瞬く間に剣と槍で突き刺されて、その場に倒れこんでしまった。