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また桜は散り過ぎて
第2章 出会うのは、二つ目の桜

 だんだん日が伸びてきて、春に向かって空も空気も緩んできたと感じる
3月の中頃になった。
 週中はだいたい総菜を買って帰るのが定番になっている。
自分で料理を作るのは週の初めと週末くらい。
今日も明るいおかみさんの笑顔も売りの「石沢ミート」に寄った。
「お帰り。あ、そうだ、これこれ」
おかみさんがポケットから少し皺のある紙を取り出して私の前に差し出した。
「なんですか?これ」
受け取り広げてみると、新装開店と大きな文字が目に飛び込んだ。
「あの喫茶店の店主がさっきまでビラ配りしてたんだよ。再来週オープンするんだって」
「そうなんですか」
「下にクーポン券がついてるから、町田さんにあげようと思って」
「わあ、ありがとうございます!行ってみます。興味あったんだぁ、喫茶店って」
私たちの世代にはなじみは薄い。お茶するっていったらチェーンのコーヒー店がほとんど。
それとかファミレス。父や母が懐かしんで話してくれる喫茶店には
ほとんど行ったことはない。
というより、そういう店自体があまりない。
「この商店街にも昔はあったんだけどね、みんな年取ってやめちゃったから。
 あたしらも憩いの場所ができるねって、楽しみにしてるんだよ」
おかみさんは嬉しそうに新しく生まれる店の方向へ視線を送った。



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